長嶋修『「空き家」が蝕む日本』


「空き家」が蝕む日本 (ポプラ新書)「空き家」が蝕む日本 (ポプラ新書)
(2014/07/08)
長嶋 修

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 長嶋修著『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書/842円)読了。
 「空き家問題」に関心があるので、最近立てつづけに出ている概説書の一つを読んでみた。

 近年、日本の空き家率が急速に高まっており、「空き家問題」が深刻な社会問題になりつつある……という話は、少し前に読んだ坂口恭平の『独立国家のつくりかた』で知った。

 ニュース番組などで空き家問題が取り上げられる機会も増えてきた。
 少子高齢化が急速に進み、住宅需要は下がる一方なのに、新築マンション・一戸建ては馬鹿みたいに増えつづけている。このままでいけば家は余る一方だろうと、素人目にもわかる。

 ではなぜ、空き家率が高まっているのに新築着工は減らないのか? また、持ち主がいるのに空き家のまま放置される家が増えつづけているのはなぜか? そうした素朴な疑問に、本書は明快に答えてくれる。

 たとえば、空き家のままにしておいたほうが、更地にするよりも固定資産税が安いのだそうだ。住宅が足りなかった高度成長期に、新築住宅建設促進のために作られた制度が、そのままになっているためだという。
 
 また、日本の住宅の「寿命」は実際よりも短く見積もられているとか、中古住宅の資産価値が不当に低すぎるとか、先進諸外国に比べて特異な住宅事情が、空き家率の高さの要因として説明されていく。

 ただ、空き家問題がストレートに論じられるのは全7章のうち第2章のみで、「看板に偽りあり」の観が否めない。
 ほかの章は、「ここがおかしい! 日本の住宅行政」とか、「不動産業界の闇」くらいのタイトルがふさわしい内容なのだ。

 それでも前半の各章は、空き家問題の背景を論じたものとして読むことができる。しかし、後半になると、タイトルと内容がどんどん乖離していく。

 きわめつけは、最後の第7章「海外シフトする不動産投資」。
 この章は、「これから海外不動産投資をするならフィリピンがいいっスよ!」みたいな内容になっている。空き家問題とは1ミリも関係がない。

 不動産コンサルタントの著者は「セブ島でコンドミニアムの分譲事業にも携わっている」そうで、なんのことはない、この章は自分の商売の宣伝なのである。
 読者をバカにしているというか、担当編集者が「この章は必要ないからカットしましょう」くらい言えよ、という感じだ。

 前半だけなら読む価値がある本。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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