荒俣宏『0点主義』


0点主義 新しい知的生産の技術570点主義 新しい知的生産の技術57
(2012/05/16)
荒俣 宏

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 荒俣宏著『0点主義――新しい知的生産の技術57』(講談社)読了。

 「0点主義」とは、「点数という束縛から離れて、さまざまな知的関心を楽しく広げていくこと」だそうだ。
 いわく、「0点の成績をとりつづけることでたくわえられる『知の力』というものがあるのだ」と……。

 要は、“「テストでいい点を取る」などというつまらぬ目的で勉強をせず、自分が面白いと感ずることをどんどん勉強していけ。それを突きつめていけば、やがてひとかどの仕事ができる力が身につく”ということだろう(私なりに意訳)。

 なるほど、荒俣宏自身は、そうした知的探求をつづけて独自の地位を築いた人に違いない。
 本書はそのような、“好きな勉強を楽しみながらつづけ、大きな「知の力」をつける方法”を、さまざまな角度から説いたもの。

 以前、荒俣が会社員時代の昼休みの過ごし方を綴ったエッセイを読んで、強い印象を受けた。
 副業で翻訳の仕事をしていた彼は、1回の昼休みで1ページを訳すノルマを自らに課していたという。昼食もとらず、昼休みに一心に翻訳作業をする知的貪欲さに、感服したものだ。

 そういう人が書いた「知的生産の技術」なら、ためになりそうではないか。

 ただ、本書はかなり期待はずれ。
 「新しい知的生産の技術」と副題にはあるのに、書いてあることはどれも、技術以前の抽象的な「心構え」ばかり。そして、心構えとしても凡庸なアドバイスが多い。

 本書のメイン・メッセージともいうべき、「恐怖や強制のもとでする勉強は楽しくないし、身につかない。ごはんを食べることも忘れて熱中することが、勉強の王道なのだ」という主張は、そのとおりだと思う。
 言いかえれば、「フロー体験」に結びつく勉強こそが真の勉強だということだろう。

 だが、それはまあ、あたりまえの話だ。問題は、我々が日々要求される「勉強」が、夢中になれるものばかりではないということなのである。
 本書には“苦手な分野も心構え一つで楽しく勉強できる”というようなことも書いてあるが、あまり説得力がない。

 要するに、目先の利益に結びつかない分野でも一心不乱に勉強できること自体、荒俣に与えられた特異な才能なのだろう。したがって、本書は我々凡人にはあまり参考にならない。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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