竹内薫『この世の常識は「仮説」だらけ!』


この世の常識は「仮説」だらけ!  なぜ人は「ニセモノ科学」にダマされるのか!? (静山社文庫)この世の常識は「仮説」だらけ! なぜ人は「ニセモノ科学」にダマされるのか!? (静山社文庫)
(2014/06/04)
竹内 薫

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 竹内薫著『この世の常識は「仮説」だらけ!――なぜ人は「ニセモノ科学」にダマされるのか!?』 (静山社文庫/778円)読了。

 2008年に『白い仮説 黒い仮説』というタイトルで出た単行本の文庫化。文庫化にあたって、「STAP細胞」を取り上げた章が新たに加えられている。

 理学博士でもある本格派サイエンス・ライター(ご本人は「サイエンス作家」という肩書を使用)が、さまざまな分野のアヤシイ仮説を「科学の目」から「ぶった斬る」サイエンス・コラム集である。

 「ぶった斬る」という言葉は、本書の「まえがき」にもカバーの惹句にも登場する。ただし、実際に読んでみると「ぶった斬る」という感じではない。
 ニセ科学をバッサバッサと痛快に論破していくというより、中学生にも理解できる平易な文章とあたたかい語り口で、科学的「仮説思考」の基本を教えてくれる内容なのだ。

 ブラックホールや地球温暖化など、科学分野のビッグ・クエスチョンも取り上げられているが、むしろ、日常的なテーマに科学のメスで切り込んだパートのほうが面白い。
 たとえば、いわゆる「マイナスイオン効果」のアヤシさ、血液型性格分類の非科学性(ただし、著者は“血液型が性格に及ぼす影響も、まったくないとはいいきれない”と慎重姿勢)などである。

 “テレビ視聴率を科学の目で見ると、4%以内の誤差があり得るので、1%程度の上下で一喜一憂するのはナンセンス”という話など、たいへん面白い。

 全編まんべんなく楽しめてためになる本だが、私がいちばん感心したのは、相対性理論を取り上げた項目。

 「GPS衛星の時計は(地球上と比べて)どれくらい遅れるか?」という問いに答える形で、著者は相対性理論とは何かを平易に解説していく。それは、私がこれまで読んだ相対性理論の解説の中で、いちばんわかりやすいものだった。「これ以上噛み砕くのは無理だろう」というレベルまで咀嚼されているのだ。

 著者はサイエンス・ライターとしてのキャリアの中で、「相対性理論をやさしく説明するにはどうすればよいか?」をくり返し考え、試行錯誤してきたのだろう。そうした積み重ねが感じられる素晴らしい解説だ。

 ちなみに、GPS衛星は「相対性理論がいちばん役に立っている」発明であり、このように「テクノロジーによって実用化されているかどうか」が、黒い仮説(アヤシイ仮説)と白い仮説(アヤシくない仮説)を分かつ大きなポイントだと、著者は言う。

 アインシュタインは1921年にノーベル物理学賞を得たが、そのときには相対性理論で受賞したのではない。それは、まだ当時の物理学界が相対性理論を「白い仮説」として十分認めてはいなかったからだ、という。なるほどなるほど。

 科学オンチにも科学的思考のなんたるかが理解できる、一級の科学啓蒙書。
 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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