山口果林『安部公房とわたし』


安部公房とわたし安部公房とわたし
(2013/07/31)
山口 果林

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 山口果林著『安部公房とわたし』(講談社/1620円)読了。

 私は作家・安部公房にも女優・山口果林にも思い入れがないが、それでも本書は面白く読めた。
 18歳のときから安部公房の逝去まで、四半世紀にわたって不倫関係にあった山口が、自らの人生を振り返る形で公房との日々を綴った1冊。

 カバーおよびカラー口絵の写真の、若き日の山口果林がたいへん美しい。
 掲載写真についての説明がないが、おそらくいずれも安部公房が撮ったものなのだろう。中にはベッドに横たわって微笑むヌード写真もあって、ドキリとする。

 ノーベル賞候補とも目された一流作家と、女優の愛人関係――いかにもドラマティックな題材であるし、じっさいドラマティックな部分もあるのだが、むしろ2人の日常のさりげないディテールが印象に残る。
 著者の語り口も、短いシーンを断片的に積み重ねたエッセイのようで、ことさら話を盛り上げようとするあざとさは皆無だ。

 アマゾンのカスタマーレビューを見ると、「言い訳がましい」などという手厳しい評が目立つ。
 「不倫相手のことを、相手が亡くなって20年も経ってから明かした暴露本」という色眼鏡で見れば、そういう感想になるだろう。
 
 しかし私は、「暴露本」的な下品さも、不倫の自己正当化のような姑息さも感じなかった。むしろ、著者はすこぶる正直に、誠実に、安部公房との関係を見つめ直していると感じた。

 次の一節が心に残る。

 安部公房の死の経緯がスポーツ新聞に掲載されたことで、「山本山」のコマーシャルから降板させられたのはショックだった。マネージャーは呼び出され謝罪したという。謝罪すべきことだったのだろうか。私の二十五年間は償うべき人生だったのだろうか。



 山口果林といえば、1980年のATG映画『海潮音』で演じた役柄が印象的だった。
 記憶を失った状態で海辺で発見される謎の女の役で、彼女はファム・ファタールとなって周囲の人間関係を壊してしまうのだった。ハマリ役だったと思う。本書でも、『海潮音』撮影時のことに少し言及している。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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