エリック・シュミットほか『第五の権力』


第五の権力---Googleには見えている未来第五の権力---Googleには見えている未来
(2014/02/21)
エリック・シュミット、ジャレッド・コーエン 他

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 一昨日は新潟で取材。天気予報では台風直撃の日だったのだが、朝出発するころには台風がもう去っていたので、よかった。


 行き帰りの新幹線で、エリック・シュミット、ジャレッド・コーエン著、櫻井祐子訳『第五の権力――Googleには見えている未来』(ダイヤモンド社/1944円)を読了。

 グーグル会長エリック・シュミットの初の著書として、話題を呼んでいる1冊。
 共著者のコーエンは、グーグルのシンクタンク「Google Ideas」の創設者兼ディレクター。2006年から2010年にかけて、ライス、ヒラリー両国務長官の政策アドバイザーも務めた人だという。

 グーグルの「中の人」が書いた本といえば、ダグラス・C・メリルの『グーグル時代の情報整理術』というのを読んだことがある。これはちょっと期待外れだったが、本書はかなり面白かった。

 「第五の権力」とは、近い将来、インターネットによって世界中の人々がつながることで生まれる「権力」の謂。
 ただ、副題の「Googleには見えている未来」のほうが、内容の的確な要約になっていると思う。

 2025年には、世界人口(80億に達すると予測される)のほとんどがネット環境を手にしてオンラインで結ばれるだろう……と、著者たちは予測する。
 そのことが世界にどのような激変をもたらすのかを、さまざまな角度から探った未来予測の書なのである。

 グーグル会長の著書なのだから、ネットがもたらす未来についての予測が楽観側に大きく振れているのは、まあ当然だろう。だいたい、バラ色の未来を描く楽観が7割、悪夢の未来を描く悲観が3割というところ。

 たとえば、終章には次のような一節がある。

 技術を通じた世界の一体化が実現したとき、どれだけ多くの新しいアイデア、新しい観点、新しい作品が生まれ、そのインパクトはどれほど速やかに感じられるだろうか。
 これからも多くの人が仮想世界に足を踏み入れるが、そのことは彼らにとっても、すでにつながっている私たちにとってもプラスになる。人類の英知と創造性をより多くの人と共有することで、人類全体としての利益は指数関数的に増えていくのだから。
 情報技術は電力のように、どこにいても使えるようになる。
 あってあたりまえのもの、なくてはならない生活の一部になるから、それがなかった頃の生活を子どもに説明するのにさえ苦労するだろう。


 
 もっとも、全体を読めば、楽観にも悲観にも十分な根拠が示されており、荒唐無稽な机上の未来予測とは一線を画する。

 グーグルは2010年に中国市場から撤退して世界をあっと言わせたが、そのことをふまえて読むと、中国の未来についても予測した第3章「国家の未来」はひときわ興味深い。

 あと、いちばん目からウロコが落ちたのは、第5章「テロリズムの未来」。
 これは、本書の中で最も悲観的色彩が濃い章といえる。次の一節のように、ゾッとする記述が山盛りだ。
 

 未来のテロリストは、おそらく「普及型」の無人飛行機と、携帯型IEDを組み合わせたテロ兵器を自作するだろう。



 「IED」とは、「即席爆発装置(Improvised Explosive Device)」のこと。
 たとえば、「バイブレーション機能をオンにした携帯電話に、爆弾の起爆装置をテープづけしてつくった爆弾は、その携帯に電話をかけるだけで、遠隔から爆発させることができ」るそうで、すでにイラクで米軍相手に使用されているという。
 そして、『ターミネーター』のようなロボット兵器が戦う戦争も、本書が描く「未来」の一部なのである。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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