松井巧『ジャズ・ロック』『ブリティッシュ・ジャズ・ロック』


ジャズ・ロック (THE DIG presents disc guide series (35))ジャズ・ロック (THE DIG presents disc guide series (35))
(2008/10/31)
松井 巧

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 ジャズ・ロックのディスク・ガイド本2冊――「THE DIG presents disc guide series」シリーズの『ジャズ・ロック』(シンコーミュージック)と、『ブリティッシュ・ジャズ・ロック』(ビー・エヌ・エヌ)――を、中古で購入。

 2冊とも、音楽評論家・松井巧の手になるもの。
 後者は、タイトルどおり英国産ジャズ・ロックに絞ったガイドである。前者は国を絞らない網羅的ガイドなのだが、それでもソフト・マシーンやニュークリアスなどのブリティッシュ・ジャズ・ロックが中心となっている。

 したがって、セレクトされたアルバムには重複も多い。だが、松井は文章の流用はせず、同じアルバムの紹介文もきちんと書き分けている。こうした誠実さは好ましい。

 ここ数年、私が日常的にいちばんよく聴いているジャンルはジャズ・ロックである。
 なので、名盤と評されるものはだいたい聴き尽くしたつもりでいたが、この2冊のガイドを読むと知らないアルバム/アーティストがけっこうあった。奥深いジャンルですなあ。

 松井自身も書いているように、どこからどこまでをジャズ・ロックと見做すか、ジャズ・ロックをどう定義するかの基準は、非常にあいまいである。プログレやハード・ロックなどの他ジャンル以上に、そのあいまいさが際立っているのがジャズ・ロックなのだ。

 ゆえに、この2冊を読んでも、「えっ、これをジャズ・ロックに入れるの?」とか、「なんであれが入っていないんだ?」などと、首をかしげる点が少なくない。

 たとえば、私はマハヴィシュヌ・オーケストラとリターン・トゥ・フォーエヴァーこそ2大ジャズ・ロック・バンドだと思っているが、松井はRTF(と、その各メンバー)への評価が低すぎるように思う。
 彼らの最高傑作『浪漫の騎士』も取り上げられていないし、アル・ディ・メオラやスタンリー・クラークのソロ作も完全無視なのだ。

 また、ジャン=リュック・ポンティのソロ作がまったく取り上げられていないのも不思議だ(ジョージ・デュークとのデュオ作が入っているのみ)。彼の『秘なる海(エニグマティック・オーシャン)』はジャズ・ロック史上に残る名盤だと思うのだが……。

 思うに、松井はプログレの一形式としてのジャズ・ロックを重視しており、逆にフュージョンの一形式としてのジャズ・ロック(≒ハイパー・テクニカル・フュージョン)は比較的軽視しているのだろう。
 もちろん、十人十色のジャズ・ロック観がある以上、そうした偏りがべつに悪いわけではない。

 ……そのように、私と見解が異なる点も多々あるのだが、2冊とも、すごい量の情報を詰め込んだ労作であり、カラーページも多いのでパラパラ見ているだけで楽しい。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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