最相葉月『最相葉月 仕事の手帳』


最相葉月 仕事の手帳最相葉月 仕事の手帳
(2014/04/02)
最相 葉月

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 ファクス機器が不調なので、新しいものに買い替えた。
 こんなアナログな機器とはもうオサラバしたいところだが、ファクスが必要な仕事もまだわずかに残っているので、そうもいかないのである。

 今日は、都内某所で打ち合わせが一件。
 行き帰りの電車で、最相葉月著『最相葉月 仕事の手帳』(日本経済新聞出版社/1620円)を読了。

 「ひとつのテーマを何年も追い続ける徹底した取材で知られるノンフィクションライターによる初の仕事論」という惹句を目にして、反射的に手を伸ばしたもの。

 本書のパート1「仕事の心得」(全体の5分の2程度に当たる)は、たしかにその惹句のとおりの内容。エッセイとしても質が高いし、ライターの1人として参考になる。『日本経済新聞』の連載をまとめたものだ。

 パート2は、著者が「InterFM」で行った三浦しをん(作家)と野町和嘉(写真家)へのインタビューの文字起こしに、少し加筆しただけ。こんなのいらないと思う。ページ数稼ぎとしか思えない。

 パート3は、「科学を書く」という書き下ろしと、早稲田大学大学院のジャーナリズムコースで著者が行った講義「私のノンフィクション作法」をベースにした「人間を書く」からなる。

 そのうち「人間を書く」は、著者が『星新一 一〇〇一話をつくった人』をどのように書き進めていったかの舞台裏をつぶさに明かしたもの。緻密な仕事ぶりがうかがえて興味深い。1人の人物に的を絞ったノンフィクションを書こうとしている人にとっては、この文章自体が最高のお手本になるだろう。

 最後のパート4は、著者がブック・アサヒ・コムに連載していた、ノンフィクションの名作を紹介する書評を集めている。内容は悪くないが、べつにこの本に入れなくてもよかったと思う。

 私が本書の編集者なら、パート2、パート4はすべてカットし、パート1とパート3をふくらませて1冊にする。そうすれば、立花隆の『「知」のソフトウエア』や、野村進の『調べる技術・書く技術』に匹敵する、「ノンフィクション作家の知的生産術」のスタンダードになり得ただろう。
 中途半端な“寄せ集め感”があって、そこが残念な本だ。

 とはいえ、パート1とパート3は面白い。普遍的なライター入門というより、著者個人の仕事を振り返った内容だが、それでも物書きなら教えられるところ大である。

 共感するくだりも多い。たとえば――。

 締め切りに遅れることはあっても、締め切りを忘れることはない。あ、忘れてた、なんていう人がいたら、それは文筆が本業ではない人だろう。文筆専業の人間の体内時計は締め切りを中心に時を刻む。体がもう、そのようにできている。



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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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