安部譲二・山田詠美『人生相談劇場』


人生相談劇場人生相談劇場
(2014/01/09)
安部 譲二、山田 詠美 他

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 PC遠隔操作事件、佐藤博史弁護士はなんともお気の毒な事態――。

 私には以前、仕事で裁判の傍聴に通っていた時期があるのだが、佐藤さんはそのころ法廷で好印象を抱いた弁護士の1人であった。熱意あふれる弁護をする人である。

 今回の事態で、佐藤さんを非難するのは筋違いだろう。
 昨日たまたま観ていたテレビのワイドショーでは、「佐藤弁護士は責任逃れのために被告をサイコパス呼ばわりしている」などと言っていた。サイコパス云々は被告が自ら言った言葉で、佐藤さんはそれを紹介しただけなのに……。


 安部譲二・山田詠美著『人生相談劇場』(中央公論新社/1728円)読了。

 月刊『婦人公論』に連載された対談の単行本化。タイトルのとおり、読者からの人生相談に両著者が対談形式で答える体裁をとっている。
 ただし、話しているうちに相談とは関係ない内容になってしまう回が多い(笑)。

 安部譲二は、小説家としては半引退状態らしい。本書でも、「(小説が)書けなくなった」「小説の依頼がない」とくり返し発言している。
 小説家としての力量については措くとしても、人生経験が豊富な人だけに、人生相談への答え方は含蓄があって面白い。

 20数年前、私が生まれて初めて書いた雑誌コラムは、「雑誌の人生相談読み比べ」というテーマであった。さまざまな雑誌に当時連載されていた人生相談を読み比べて、ベスト3を選ぶというネタである。
 そのとき、安部が当時『週刊ポスト』に連載していた「人生問答」を第2位に選んだことを思い出した。

 本書においても、安部、山田ともに、思わずメモしたくなるようないい言葉をたくさんくり出している。
 たとえば、45歳主婦の、勤め先の一回り若い男性との恋を「進むべきか、あきらめるべきか」という相談に対する答えの一節――。

安部 だからね、恋っていうものは「恋」って言うから美しいんで……。女は知らないけれど、男はそれを性欲だと思うと身も蓋もないよな。
山田 私も、発情することが感情と一緒になったときに恋と呼ぶんだと思ってますよ。だから、初恋は一番最初の発情期で、純愛って一番よこしまな発情の形態だと思ってる。



 私生活でも仲のいい友人だという2人は、対談でも終始息が合っている。それでいて、山田が安部を本気で叱りつける一幕もあるなど、内輪の「なあなあ」に終わっていないところもよい。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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