立川シネマシティにて、『そこのみにて光輝く』を観た。
佐藤泰志が遺した唯一の長編小説の映画化。
佐藤作品の映画化は、2010年の『海炭市叙景』につづいて2作目。ブレイクすることのないまま、1990年に自ら命を絶ったマイナー作家が、四半世紀を経たいまになって脚光を浴びているのは皮肉である。
■関連エントリ→ 佐藤泰志『海炭市叙景』レビュー
昔のATG映画(の青春映画)を彷彿とさせる、重く、暗く、湿った映画。しかし、そこがよい。この暗さこそが日本映画だと思う。
主要キャストが全員熱演を見せる映画だが、なんといってもヒロインの池脇千鶴が素晴らしい。『罪と罰』のソーニャのような薄幸のヒロインを、圧倒的な生々しさで演じて見事だ。『ジョゼと虎と魚たち』と並んで、彼女の女優としての代表作になるだろう。
映画自体にも、“もう一つの『ジョゼと虎と魚たち』”という趣がある。どちらも、過酷な環境の中にあるヒロインの元に、“王子様”がやってきて違う世界に連れて行こうとする話なのだ。
もっとも、『ジョゼ~』にあった軽やかさは本作にはなく、描かれる恋愛も、互いの深い孤独が共鳴し合うようなものなのだけれど……。
『ジョゼ~』の王子様・妻夫木くんは最後にヒロインの元を去っていったが、本作の綾野剛はヒロインがボロボロになっても寄り添いつづける。その意味では、哀しい結末ながらもハッピーエンドなのかもしれない。
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