薬師丸ひろ子『時の扉』


薬師丸ひろ子セレクション・カバーアルバム 時の扉 (通常盤)薬師丸ひろ子セレクション・カバーアルバム 時の扉 (通常盤)
(2013/12/04)
薬師丸ひろ子

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 薬師丸ひろ子の『時の扉』(EMI Records Japan)を聴いた。
 女優デビュー35周年を記念して作られた、彼女が愛する歌を集めたカバーアルバムだ。曲目は次のようになっている。

1. 冬の星座
2. 秋の子
3. 星を求めて
4. 浜辺の歌
5. クリスマスには帰るから
6. 心の扉~我が母の教えたまいし歌~
7. 椰子の実
8. 故郷
9. 仰げば尊し
10. 黄昏のビギン
11. セーラー服と機関銃~ノスタルジア・バージョン~
12. 夢で逢えたら
13. ユーレイズミーアップ~祈りバージョン~ (with ケルティック・ウーマン)



 童謡や唱歌、古い外国映画の主題歌、クリスマス・ソングなどが並ぶ選曲が、いかにも彼女らしい。流行になど、およそ頓着しない人なのだ。なにしろ、歌手としてのデビューアルバムからして『古今集』だったのだから。

 映画音楽・ドラマ劇伴の世界で著名な吉俣良(よしまた・りょう)が全曲担当したアレンジが素晴らしい。
 生ピアノとストリングスを中心とした、上品で落ち着いたアレンジ。古き佳きハリウッド映画の音楽を思わせるドリーミーな世界が広がる。

 薬師丸の持ち歌で取り上げられているのは、「セーラー服と機関銃」のみ。スパニッシュな香りの生ギターで彩られた、これも絶妙なアレンジである。

 前に彼女のベストアルバム『歌物語』を当ブログで取り上げた際、私は次のように書いた。
 

 歳月を経たことでファンとしての色眼鏡を外して聴いてみると、シンガー・薬師丸ひろ子の限界もはっきり見えてしまう。どんな曲を歌っても同じような一本調子のヴォーカルで、微妙なニュアンス、陰影に乏しいのだ。
 それに、彼女はロック的なリズム感が致命的に乏しい人で、ちょっとロック色の強い曲になるとまるで魅力がない(阿木耀子・宇崎竜童コンビの「紳士同盟」など)。

 だがそれでも、透き通ったマジメな声質(そう、彼女は声からして優等生的でマジメなのだ)はいまなお魅力的だし、素直に歌い上げるバラード・タイプの曲は素晴らしい。



 まさにこのアルバムには、シンガー・薬師丸ひろ子のそのような特長にぴったり合った曲ばかりが選ばれている。彼女は自分をよく知っているし、吉俣良をはじめとしたスタッフたちも、彼女の魅力をよくわかっていると思う。

 とくに、「椰子の実」「故郷」「仰げば尊し」と、問答無用のジャパニーズ・スタンダードが3曲つづくシークェンスは絶品だ。
 「おいおい、いまさら『仰げば尊し』かよ(笑)」とか食わず嫌いせず、聴いていただきたい。スーッと胸に沁みる仕上がりだから。



 35年来のファンの一人として十分納得のいく、上出来のカバーアルバム。

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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