玉川重機『草子ブックガイド』ほか


草子ブックガイド(1) (モーニングKC)草子ブックガイド(1) (モーニングKC)
(2011/09/23)
玉川 重機

商品詳細を見る


 ここ数年、「本を読むこと」それ自体を描いたマンガが続々と登場している。
 芳崎せいむの『鞄(かばん)図書館』、篠原ウミハルの『図書館の主(あるじ)』、玉川重機の『草子ブックガイド』、片山ユキヲの『花もて語れ』などである。

 某紙に連載しているコミック紹介のコラムで、それらを「本を読みたくなるマンガ」と題して紹介するため、各作品の既刊を一気読みした。

 上記4作のうちだと、イチオシは『草子ブックガイド』。
 絵柄・内容ともクセの強い個性的な作品で、好悪が分かれるだろうが、私はたいへん気に入った。

 学校にも家庭にも居場所がない孤独で内向的な少女・草子。読書好きな彼女にとって、ただ一つ心安らぐ場は、西荻窪の古書店「青永遠屋(おとわや)」。
 そこに通い、本を万引きして帰っては(!)、その感想を記したメモを挟んで書棚に返す日々。年老いた店主は草子の感想メモを気に入り、万引きを咎めるでもなく、「ブックガイド」を続けてくれるように頼む。

 ……という話。最初の設定からして只者ではないクセの強さだが、毎回取り上げられる古今の名作の料理の仕方も素晴らしく、読書そのものを描いたマンガとしてすこぶる質が高い。

 次によかったのが、『ビッグコミックスピリッツ』連載中の『花もて語れ』。
 これはなんと、前代未聞の「朗読マンガ」である。つまり、朗読という行為自体の魅力と奥深さを、スポ根マンガのような熱血テイストで描いていく作品なのだ。

 概要だけ聞いたら「そんなマンガが面白いはずがない」と思うかもしれないが、読んでみるとなかなか面白い。

 「朗読だけでそんなに人を感動させられるわけがないだろ!」とつっこみたくなる箇所も多々あって、強引なストーリー展開ではあるが、読んでいる間はその強引さが気にならない。読者をグイグイ引っぱるパワーがある。
 「1970年代くらいまでの少年マンガって、こんな感じだったよなあ」というなつかしさも感じさせる。

 『鞄図書館』は、世界のすべての本が所蔵されているという不思議な「鞄図書館」を持って旅をする司書が主人公。ミステリ専門誌に連載中の作品だが、取り上げられる作品はミステリに限らない。
 
 『金魚屋古書店』の芳崎せいむらしいハートウォーミングストーリーではあるのだが、毎回の話がサラッとしすぎていて、感動にまで至らない。「一回読めばもういいかな」という感じ(逆に『草子ブックガイド』は、絵柄が非常に濃密であるためもあり、何度も読み直したくなる)。

 『図書館の主』は、題材を児童文学に絞っている点は趣向として面白いのだが、ストーリーの質が低い。
 取り上げられる児童文学とその回の登場人物との関係性も、とってつけたようで陳腐。

 たとえば、我が子を束縛しすぎる若い母親に、主人公の司書が『ニルスのふしぎな旅』をオススメするエピソードがある。母親は、ガンの脚につかまって広い世界に旅出つニルスの姿を見て、子どもに対する束縛を反省するのであった。
 ……うーん、薄っぺらい。「その症状にはこの本が効きますよ」的な描き方はどうかと思う。読書の魅力って、そういう限定的・対症療法的なものではないのでは?

 まあ、「本を読むこと」自体を描いたマンガといえば、高野文子の『黄色い本 ジャック・チボーという名の友人』にとどめをさすわけで、あれを凌駕する作品はいまだ登場していないのだが……。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

里親募集中

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
25位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
17位
アクセスランキングを見る>>