関純二『担当の夜』


担当の夜担当の夜
(2013/12/05)
関 純二

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 関純二著『担当の夜』(文藝春秋/1365円)読了。

 『ヤングマガジン』の元編集長が、マンガ家と編集者の共闘関係を描いた連作小説。

 カバー画はすぎむらしんいちによるもの。見てのとおり清楚系女子高生風だが、これはたんなるアイキャッチであって、中身には女子高生はおろか若い女性すらほとんど出てこない。オッサンばかりが登場する、じつにむさ苦しい小説だ(笑)。

 ちなみにすぎむらは巻末2ページのオマケ・マンガも描いており、彼のファンならこれだけのためにでも買う価値あり。マンガの内容から察するに、著者はすぎむらの担当もしていたようだ。

 収録作4編のうち、亡き先輩編集者たちの思い出が綴られる「俺酒」だけがイマイチ。語られる思い出が酒がらみ、ギャンブルがらみなどのゲスいエビソードばかりで、読んでいてウンザリ。なんでこんな先輩たちを著者が慕っているのか、さっぱりわからない。

 しかし、ほかの3編は面白い。
 気むずかしいマンガ家との共闘から訣別までが描かれた、表題作「担当の夜」。
 ジョージ秋山がモデルだとすぐわかるベテラン・マンガ家との交流と訣別が描かれた、「担当の朝」。
 才能はあるが人格に問題のある新人マンガ家を、主人公が育て上げようとしてついに果たせない、「最後の担当」。

 それぞれ、小説としてはたどたどしさがあるものの、ディテールのリアリティはさすがに圧倒的で、マンガ好きには楽しめる作品。
 “小説版『編集王』”という趣もある。マンガでは描ききれない複雑微妙な心理描写が随所にあって、その点は『編集王』以上にリアル。

 主要キャラのマンガ家3人はみな、性格破綻者というか、壊れた感じの人物として描かれている。にもかかわらず、主人公の編集者とのやりとりは、時としてすこぶる感動的である。
 たとえば――。

「金田さん、よそをな、ほかの雑誌で回遊して、大きくなって、うちに戻ってきてくれ」
 これまで何度も使った、新人との別れの言葉を告げた。何度も言ってきたのに。声が――。
「わかりました。高野さんにうちでどうか描いてください、って土下座させたりますわ」
「そうだな。それがいいな。本当に、それがいいな。それが……」
「なに、ウエットになってるんですか。へたれ担当が。だからジャンプに勝てないんですよ」
 金田の声もふるえていた。(「最後の担当」)


 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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