アラン・ワイズマン『滅亡へのカウントダウン』


滅亡へのカウントダウン(上): 人口大爆発とわれわれの未来滅亡へのカウントダウン(上): 人口大爆発とわれわれの未来
(2013/12/19)
アラン ワイズマン

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 昨夜は大雪が降るなか、愚犬に熱望されて散歩に――。

 「気分は八甲田山」であったが、愚犬(ヨーキー)は己の背丈より高く積もった雪に埋もれながらも、「ボスボスボスボス」(犬が雪をかき分けていく音)と楽しそうに駆け回っていた。しかも、同じように雪の中を散歩させていた人にも出くわした。「♪犬は喜び庭駆け回り」というあの歌は真実なのである。


 アラン・ワイズマン著、鬼澤忍訳『滅亡へのカウントダウン――人口大爆発とわれわれの未来』(早川書房/上下各2100円)読了。書評用読書。

 タイトルだけ見ると「大予言系トンデモ本」のようだが(原題は“COUNTDOWN”というシンプルなもの)、実際にはごく真面目なノンフィクションである。

 米国の著名な環境ジャーナリストが、丸2年を費やして世界21ヶ国を取材・調査で巡り、書き上げた大作。巻末の参考文献リストだけで80ページ近いという代物で、取材調査の厚みがすごい。

 中身は、一言で言えば「21世紀版『成長の限界』」とも言うべきもの。
 ローマクラブに委嘱された科学者たちによって1972年に発表されたレポート『成長の限界』は、「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」と結論づけ、世に衝撃を与えた。

 穀物生産量を飛躍的に上昇させた「緑の革命」や、近年のシェールガス革命などによって、「成長の限界」は遠のいたかのように見える。だが、著者は「緑の革命」もシェールガス革命も、一定の「猶予期間」を与えたのみで、人類が存続の危機を迎える日は遠くないという。

 今世紀中には100億人を超えるとも予想される世界人口は、地球環境のキャパシティを大幅に超えるものであり、四重、五重の危機を人類にもたらす。食糧危機と飢餓、水不足、土壌の汚染と劣化、気候変動など……。
 綿密な調査で浮き彫りにされた各国の現状は、読む者を慄然とさせずにはおかない。

 だが、本書はいたずらに不安を煽る内容ではない。著者は21ヶ国を巡る旅のなかで、懸命に希望の光を探そうとしているのだ。
 たとえば、日本を取材した第13章。その中で著者は、日本の少子化と、豊かな自然が残る地方への若者たちの回帰に、一筋の希望を見出している。また、イランやタイのように、さまざまな問題を抱えながらも少子化政策に成功している国も紹介されている。

 環境問題を扱ったノンフィクションではあるのだが、著者の目配りは幅広く、宗教や経済、各国の歴史と文化、女性の社会進出など、さまざまなテーマが付随的に論じられる。
 詰め込まれた知的刺激の豊富さが素晴らしい。ジャレド・ダイアモンドの諸作に近い“文明論的ノンフィクション”の力作といえよう。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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