末井昭『自殺』


自殺自殺
(2013/11/01)
末井 昭

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 末井昭著『自殺』(朝日出版社/1680円)読了。

 「朝日出版社第二編集部ブログ」連載中から評判を呼んでいたエッセイの単行本化。

 『素敵なダイナマイトスキャンダル』などの過去の著作でも明かされているが、著者は小学生時代に母親を自殺によって喪っている。それも、隣家の息子である青年と不倫の末にダイナマイト心中を遂げるという壮絶なものであった。

 そんな経験から、著者は2009年に、『朝日新聞』から自殺防止をテーマにインタビューを受けた。そのインタビュー記事を読んだ朝日出版社(ちなみに、朝日新聞社とは無関係な会社)の編集者が、「自殺についての本を書いてほしい」と著者に依頼。そして生まれたのが本書である。

 自殺がテーマの本ではあっても、半分くらいは自伝的エッセイであり、自殺のことばかりが書かれているわけではない。
 また、末井昭のことだから、「死んじゃいけないよ!」と熱く訴えるような文章はただの一つもない。もっと飄々と、自殺を考えている人の傍らに座って静かに語り合うような内容だ。

 たとえば、最後の一編にはこんな一節がある。

 この連載を始めて、自殺した人たちのことをあれこれ想像するようになりましたが、いつも母親のことを重ね合わせていたように思います。母親のことを想うように、自殺していく人がいとおしく可哀想でなりません。僕は自殺する人が好きなんじゃないかと思います。
 自殺する人は真面目で優しい人です。真面目だから考え込んでしまって、深い悩みにはまり込んでしまうのです。感性が鋭くて、それゆえに生きづらい人です。生きづらいから世の中から身を引くという謙虚な人です。そういう人が少なくなっていくと、厚かましい人ばかりが残ってしまいます。
(中略)
 本当は、生きづらさを感じている人こそ、社会にとって必要な人です。そういう人たちが感じている生きづらさの要因が少しずつ取り除かれていけば、社会は良くなります。



 『素敵なダイナマイトスキャンダル』では母親のダイナマイト心中をあえて笑いにくるんで語っていた末井だが(※)、本書の語り口はもっとしんみりしていて、静謐な私小説のよう。

※なにしろ書き出しが、「芸術は爆発だったりすることもあるのだが、僕の場合、お母さんが爆発だった」である。

 エッセイの合間に入れられた著者によるインタビュー(相手は、両親を自殺で一度に喪った女性、長年青木ヶ原樹海をパトロールしていた作家の早野梓など)も、味わい深い。

 また、現在の妻である写真家・神蔵美子との関係についても、くり返し触れられている。
 それらの文章には、以前読んだ神蔵の『たまもの』を末井側から上書きしたような趣がある。2冊を併読するといっそう面白いと思う。 

■関連エントリ→ 神蔵美子『たまもの』レビュー

 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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