宮内悠介『ヨハネスブルグの天使たち』


ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
(2013/05/24)
宮内悠介

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 宮内悠介著『ヨハネスブルグの天使たち』(早川書房/1575円)読了。

 日本SF大賞を受賞した『盤上の夜』につづく、新鋭SF作家の第2連作短篇集。

■関連エントリ→ 宮内悠介『盤上の夜』レビュー

 本書も『盤上の夜』に勝るとも劣らない面白さであった。どの短編も、じつに知的でスペキュレイティブ(思弁的)。『盤上の夜』と本書は2作連続で直木賞候補にのぼって落選したが、本書で直木賞を得ていてもおかしくなかったと思う(まあ、SFでは直木賞が取りにくいわけだが)。

 連作の舞台となるのは、近未来の南アフリカ、ニューヨーク、アフガニスタン、イエメン、そして東京――。
 異なる舞台をつなぐバトンとなるのは、日本製のホビーロボット「DX9」、通称「歌姫」。富裕層の道楽品として作られた、人間型の「歌うロボット」。いわば「未来の初音ミク」である。

 無数の「DX9」が、さまざまな形で物語の鍵を握る存在として登場する。
 たとえば、「9・11」テロの犠牲となった1人の青年の意識が転写されて。また、内戦の地ではその堅牢さから自爆テロ用の兵器に改造されて。

 単行本カバーの惹句には、「国境を超えて普及した日本製の玩具人形を媒介に人間の業と本質に迫り、国家・民族・宗教・戦争・言語の意味を問い直す連作5篇」との一節がある。

 まさしく、「国家・民族・宗教・戦争・言語の意味」などという大テーマに正面から挑む志の高さ、スケールの壮大さが、この作者の魅力なのである。それでいて、どの作品も先鋭的で刺激的なエンタテインメントとしても成立しているところがすごい。

 SFという狭い枠にとらわれず、いろんな作品を書いていってほしい。たとえば、青春小説や歴史小説の長編を書かせても、きっといいものを書くに違いない。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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