大山典宏『生活保護VS子どもの貧困』


生活保護 VS 子どもの貧困 (PHP新書)生活保護 VS 子どもの貧困 (PHP新書)
(2013/11/16)
大山典宏

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 大山典宏著『生活保護VS子どもの貧困』(PHP新書/798円)読了。

 いつも読んでいるブログ「山下ゆの新書ランキング」で高評価を受けていたので、読んでみたもの。このブログの書評は質が高く、参考になる。

 著者は福祉事務所のケースワーカーを皮切りに、生活保護行政の現場でずっと働いてきた人。そしてそのかたわら、ネット上で「生活保護110番」を運営し、ボランティアで生活困窮者の相談に乗ってきたという。
 つまり、行政側の視点と困窮者支援団体側の視点――両方から生活保護を論じられる稀有な立場にいるのだ。

 本書には、その2つの視点が十全に活かされている。どちらにも偏らない中立の立場から、生活保護行政のいまが論じられているのだ。

 著者は、生活保護を論じるには「適正化モデル」と「人権モデル」の2つの立場があるとする。

 「適正化モデル」とは、貧困の原因を個人に求め、個人や家族の責任を強調する立場。もっぱら問題視するのは「濫給(不必要な給付)」や「不正受給」である。片山さつき的立場といえようか。
 
 「人権モデル」とは、貧困の原因を社会に求め、政府の責任を強調する立場。もっぱら問題視するのは「漏給(生活保護を必要とする人が給付から漏れること)」や役所の不当な申請拒否である。湯浅誠的立場といえようか。

 著者は2つのどちらにも偏ることなく、両論併記的に双方の言い分を紹介する。そして、双方が歩み寄り、協力し合えるような解決の方途を探していく。

 私は「人権モデル」のほうに共感を覚えるし、これまで読んできた生活保護に関する本もおおむねそちら側の本である。だからこそ、バランスよく双方の視点を兼備した本書の内容は新鮮であった。

 後半は、子どもの貧困の問題にぐっとズームインしていく。
 この後半も示唆に富む内容ではあるが、前半とのつなぎがうまくいっておらず、テーマの異なる2冊の本を無理やりくっつけたような印象を受けてしまう。
 そこが弱点だが、いろんな意味でバランスの取れた内容であり、生活保護問題に関心のある人なら立場を超えて一読の価値がある。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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