神島裕子『マーサ・ヌスバウム』


マーサ・ヌスバウム - 人間性涵養の哲学 (中公選書)マーサ・ヌスバウム - 人間性涵養の哲学 (中公選書)
(2013/09/09)
神島 裕子

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 神島裕子著『マーサ・ヌスバウム――人間性涵養の哲学』(中公選書/2415円)読了。書評用読書。

 マーサ・ヌスバウムは、日本ではまだ知名度が低いものの、世界的にはジョン・ロールズやマイケル・サンデルと並ぶ評価を受けている重要な哲学者だ。
 その仕事は古典学・哲学・法哲学・倫理学・フェミニズムと多岐にわたり、現代アメリカを代表する良心的知識人の1人と目されている。

 本書は、ヌスバウムの思想と人物像を概説したもの。
 2000年代後半以降、ヌスバウムの主著が相次いで邦訳され、日本でも少しずつ共鳴の輪が広がるなか、時宜にかなった刊行といえる。
 ヌスバウム自身を“主人公”にしたこのような本は、世界初だという。

 別途書評を書くのでここではくわしく紹介できないが、過不足ない上出来の概説書だと思った。
  
 生い立ちからの歩みをたどったバイオグラフィー、本人へのインタビューなど、多角的な内容。
 ヌスバウムの広範な仕事を3つの軸――新アリストテレス主義、政治的リベラリズム、コスモポリタニズム――に沿って腑分けし、それぞれの特質を浮き彫りにする手際も鮮やかだ。

 本書は題材からして、筆の赴くままに書いたらすごく難解になってしまうたぐいの本だろう。
 しかし、著者は一般書であることを十分に意識し、わかりやすい内容にする工夫を幾重にも凝らしている。その点に好感を覚えた。

 たとえば、ヌスバウムが現在教鞭をとるシカゴ大学について、「映画『恋人たちの予感』でサリーとハリーが卒業した大学である」と紹介するなど、よく知られた映画の喩えが随所に用いられる。
 また、「現代リベラリズムの潮流」「現代フェミニズムの潮流」などの項目をもうけ、ヌスバウムの思想を理解するための基本事項を初歩の初歩から解説している。こういう配慮は初学者にはありがたい。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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