はっぴいえんど「春よ来い」


 
 かしぶち哲郎死去のニュースに驚いたばかりなのに、大晦日にまさかの大滝詠一の訃報。さすがに打ちのめされた。

 かしぶちのソロワークにおける代表作『リラのホテル』は、私の青春時代の愛聴盤の一つであった。

 大滝詠一についていえば、逝去を報じた記事がこぞって代表作として紹介している『A LONG VACATION』には、まるで思い入れがない。
 私の青春期に空前の大ヒットとなったアルバムだし、圧倒的な完成度も認めるが、「私には縁のない世界」という気がして、共感できなかったのだ。まばゆいような「リゾート・ポップス」だったから……。

 私にとっての大滝詠一は、なんといってもはっぴいえんど時代である。さすがにリアルタイムで聴いていたわけではなく、後追いだけれど。
 大滝の書いた曲「抱きしめたい」とか、衝撃的だった。「な、なんだ、この日本語の乗せ方は!」と。

 でも、今夜聴くのに最もふさわしいのは、やっぱり上に貼った「春よ来い」だな。
 空前絶後に暗い「お正月ソング」。「今年は一人ぼっちで/年を迎えたんです/除夜の鐘が寂しすぎ/耳を押えてました」とか、歌詞もヘビー。

 たぶん、日本中でいま50人くらいは、ブログやツイッターなどでこの曲に言及していると思う。

 この「春よ来い」は、永島慎二の『漫画家残酷物語』の一編「春」を下敷きにして歌詞が書かれている(作詞は大滝ではなく、松本隆)。
 『漫画家残酷物語』は私にとって史上ベストワン・マンガだから、その意味でも忘れがたい曲なのである。

 『A LONG VACATION』のような、“能天気・総天然色ポップス”ばかりが大滝詠一なのではない。このような、素晴らしくブルージーな渋いロックもやっていた人なのだ。そのことを強調するとともに、つつしんでご冥福をお祈りいたします。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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