蛭田亜紗子『愛を振り込む』


愛を振り込む愛を振り込む
(2013/10/24)
蛭田 亜紗子

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 蛭田亜紗子著『愛を振り込む』(幻冬舎/1365円)読了。

 この人の小説を読むのは、3年前のデビュー短篇集『自縄自縛の私』以来2冊目である。なので『自縄自縛の私』と比較するしかないのだが、3年の間に目覚ましい進歩を遂げていてビックリ。小説家として一皮むけたという印象だ。

■関連エントリ→ 蛭田亜紗子『自縄自縛の私』レビュー

 『自縄自縛の私』は、映画化された表題作は傑作だったものの、ほかの4編は習作の域を出ていなかった。
 対照的に、全6編(+エピローグ)の連作短編集である本書は、6編とも水準以上の出来。とくに、後半3編は掛け値なしの傑作だ。

 アブノーマルな性の世界を扱うなど、キワモノ的な面もあったデビュー短篇集に比べ、本書はわりとフツーの恋愛小説集になっている。性描写はあるもののそれがメインではなく、性描写にも文学的香気があるのだ。

 フツーといっても、この著者のことだから甘ったるい恋愛小説にするはずもなく、6編ともビターでひねりの効いた“異形の恋愛小説”になっている。

 たとえば「不肖の娘」は、東電OL殺人事件の被害女性を彷彿とさせる、デスペレートな売春行為をくり返すOLがヒロインだ。また表題作は、普通なら恋愛小説の主人公にはならない、見る者をぎょっとさせるような醜女がヒロインである。
 にもかかわらず、2作とも恋愛小説としか呼びようのない作品に仕上がっている。とくに、表題作の哀切なラストシーンは素晴らしい。

 赤インクで汚れた1枚の千円札が6人の女性たちを結ぶ“バトン”となるという趣向も見事に決まっているし、短篇集としてのトータルな完成度が高い。
 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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