友川かずき『天穴の風』


天穴の風天穴の風
(1994/08)
友川 かずき

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 友川かずき(現・カズキ)著『天穴の風』(実業之日本社)読了。

 1994年に刊行されたエッセイ集・詩集。
 私は友川の音楽についてはよく知らないのだが、彼が書いた西村賢太の『暗渠の宿』の文庫解説を読み、「面白い文章を書く人だ」と思った。で、旧著に手を伸ばしてみたしだい。

 エッセイが3分の2ほどを占め、残りが詩と対談・鼎談という構成。

 『暗渠の宿』の解説によれば、友川は西村賢太の小説にすっかりのめり込み、全作品を熟読しているという。
 本書のエッセイを読むと、そのことに得心がいく。友川の暮らしぶりは西村の作品世界にごく近いからだ。

 友川は歌と絵画、それにエッセイなどの文章をなりわいとしているのだが、それだけでは生活費が足りないときには土方仕事で糊口をしのいできたという。
 その点が西村を彷彿とさせるし、何より酒の飲みっぷりや泥酔時の乱れっぷり、しばしば酔って暴力をふるう性格破綻者ぶりが、よく似ているのだ。

 友川は、西村のように買淫の様子を作品に書くことはない。また逆に、友川が好きなギャンブルを西村はやらない。その2点が異なるものの、それ以外は年の離れた兄弟のように思えるところがある。友川が西村に深く共鳴するのも当然だろう。

 文章プロパーの人ではないから、友川のエッセイは西村のそれほど面白くはない。それでも、西村作品の愛読者なら同じ匂いを感じて好ましく思えるだろう。

 ときどき、キラリと光る一節に出合う。たとえば――。

 ちあきなおみのCDが届く。中の一曲「祭の花を買いに行く」というのを私が創った。
 全曲聴くがつまらない。
 ジャニス・ジョプリンの歌を歌うちあきなおみはもの凄くいいのに、やはり器用というのは狂気を売り渡した駄賃である。



 「器用というのは狂気を売り渡した駄賃である」という表現に凄みがある。

 私は酒席ではただただ嬉しい人間である。話題などは心の高揚をとりつくろう単なるツマなのである。


 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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