楡周平『「いいね!」が社会を破壊する』


「いいね!」が社会を破壊する (新潮新書)「いいね!」が社会を破壊する (新潮新書)
(2013/10/17)
楡 周平

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 楡周平著『「いいね!」が社会を破壊する』(新潮新書/777円)読了。

 読んだ人のほとんどが思うことだろうが、タイトルと内容に乖離がありすぎ。
 このタイトルなら誰だって、「ツイッターなどのSNSの普及によって人々の悪意が増幅され、社会の息苦しさが増していく」的なネット批判の書を思い浮かべるだろう。

 しかし実際には、SNSの話などほとんど出てこない。「ネット社会化」の負の側面に光を当てた本には違いないが、本書が目を向けるのはむしろネット社会化による雇用喪失の問題なのだ。
 少し前に『コンピュータが仕事を奪う』 (新井紀子)という本があったが、本書は『ネットが仕事を奪う』とでもしたほうが的確な内容である。

 『コンピュータが仕事を奪う』 はじつに面白い本だったが、本書はイマイチ。
 そもそも、著者は小説家であって評論家ではないから、この手の評論ぽい文章は得意ではないらしく、論の進め方がダラダラしていて散漫だ。

 それでも、1~2章はわりと面白く読める。

 1章は、著者がかつて同社日本法人に在籍していたイーストマン・コダックが、デジカメ技術の進歩と普及によって経営破綻するまでの道筋をたどったもの。いま多くの業界で進行している「イノベーションが雇用を破壊する」プロセスの典型例を、そこに浮かび上がらせるのだ。
 著者が最もよく知る業界の話だけあって、この章は内容が濃い。

 つづく2章は、著者がいま身を置いている出版業界の近未来を展望したもの。電子書籍の普及が出版不況の救世主にはならず、「電子出版という新しい船に乗り込むことを許されるのは、ごく僅か」となる過酷な未来を、著者は描いてみせる。
 目新しい論点はないものの、電子書籍ビジネスの世界を舞台にした長編小説『虚空の冠』も書いている(らしい。私は初期の犯罪小説しか読んだことがないけど)著者だけに、電子出版をめぐる冷徹な分析はなかなか読ませる。

 しかし、3章以降はだんだんつまらなくなっていく。
 “スマホの普及は人を幸せにしない”だとか、グーグルなどによって個人情報が収集される危険性だとか、「ネットが拍車をかけた就活地獄」だとか、「何をいまさら」な話ばかりが目立つのだ。

 前半だけなら読む価値はあるが、一冊の本としては中途半端な出来と言わざるを得ない。



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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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