上阪徹『職業、ブックライター。』


職業、ブックライター。 毎月1冊10万字書く私の方法職業、ブックライター。 毎月1冊10万字書く私の方法
(2013/11/12)
上阪 徹

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 上阪徹著『職業、ブックライター。―― 毎月1冊10万字書く私の方法』(講談社/1575円)読了。

 「ブックライター」とは聞き慣れない職業名だが、要は書籍のゴーストライターをメインの仕事としているライターのこと。
 「ゴーストライター」という名称はイメージがよくないからということで、著者が考えた新しい名称である。

 私も同じように感じていて、「ゴーストライターという言葉を使うのをやめて、『文章化のアウトソーシング』とでも言えばよいのだ」と、当ブログでも書いたことがある。

■関連エントリ→ ゴーストライターの仕事について

 たしかに、「ゴーストライターになりたい」と最初から思う人は少なくても、「ブックライター」だったら「なってみたい」と思う人も多いことだろう(中身は同じだけどw)。

 本書は、これまでに著者がやってきた仕事をふまえ、「ブックライター」の仕事とはどういうものかを解説した内容。要は、ゴースト仕事に特化したライター入門である。

 著者と同様、書籍の聞き書きゴーストを中心に仕事をしてきたライターである私は、本書の内容に大筋で同意できた。
 ただ、私にとってはあたりまえのことが大半なので、得られるものはあまりなかった。ライター志望の学生などが読む入門書としてはよい本だろう。

 副題の「毎月1冊10万字書く」は、私もクリアしている。
 てゆーか、丸1ヶ月あれば1冊の本が書けるのは、ライターとしては平均的能力で、とくにすごいというわけではない。ま、質が問題なわけだから、書く速さだけ比べても意味がないけれど……。

 著者のすごさはむしろ、20年間にわたってブックライターをつづけながら、一度も〆切に遅れたことがない、という点にある。この点は素直に脱帽。

 ただ、全体として気になったのは、ブックライターのオイシイところばかり強調している点。
 都内の高級住宅地に160平米の自宅兼仕事場を構え、ドイツ車を2台もち、着るスーツはほとんどがイタリア製、土日はオフにして仕事は入れない……。著者が明かすライターとしての暮らしぶりは、私から見ると「いったいどこの世界の話だよ?」という感じだ。

 著者はブックライターの世界では突出した成功者であって、みんながこんなふうだと思ってはいけない。
 むしろ、四半世紀以上ゴースト仕事をしてきた私の実感は、「ブックライターとして食っていける時代は、いよいよ終わる」ということだ。

 とにかく本が売れないから、20年前なら1冊のゴースト仕事で得られた金額を、いまでは2冊、ヘタしたら3冊書かなければ得られない。「書籍のゴーストだけではとても食っていけない」時代なのである。

 本書を読んで若者がブックライターに憧れるのは自由だが、著者のようになるためには上位5%程度の成功者になる必要がある、ということは肝に銘じてほしい。

 過去の類書に、松枝史明の『実践的ライター入門』(2004)がある。書籍ライターに特化した入門書としては、こちらのほうがバランスの取れた内容でよいと思う。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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