園子温『けもの道を笑って歩け』


けもの道を笑って歩けけもの道を笑って歩け
(2013/09/05)
園子温

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 園子温著『けもの道を笑って歩け』(ぱる出版/1470円)読了。

 少し前に読んだ前著『非道に生きる』につづく、園子温の自伝的エッセイ第2弾。
 『非道に生きる』と内容が重複する部分も少しだけあるが、気にならない程度。園子温のファンなら2冊併読しても全然オーケイだ。

 各章の扉には、その章で言及される映画のタイトルが並べられている。そのリストの中には園子温の自作もあれば、彼が愛してやまない映画や、ダメな作品の見本として挙げられる映画もある。

 そのことが示すとおり、園子温の映画観や、映画監督としての仕事術にウエイトを置いた内容になっている。人間・園子温にズームインした内容であった『非道に生きる』とは、そこが大きな違いだ。

 とはいえ、たんなる映画論・演出論ではない。本書の映画への言及はすべて、園子温の生きざまそのものと密接に結びついている。映画を語ることを通して、自らを語っているのだ。
 
 『非道に生きる』を読んだときにも思ったことだが、園子温の本は岡本太郎の本に似ている。表現者としていかに周囲の無理解や常識の壁と闘ってきたか――つまり、どうやって道を切り開いてきたを語る「熱さ」がすがすがしく、読むと励まされる点が共通しているのだ。

 また、本音全開で日本映画の現状を語ったくだりも多く、それらはすこぶる痛快である。たとえば――。

 若い頃に冒険しないで、いつ冒険するのかということ。『舟を編む』(2013)とか、どう考えても落ち着きすぎです。監督が20代で撮った作品なのに、随分老け込むのが早い。あと40年どうするんだろうと心配になります。
 若いうちは冒険したほうがいい。それからでも成熟は遅くない。小津安二郎だって若い頃、『エロ神の怨霊』(1930)という作品を撮っています。



 「いい映画を作りたい」という監督にはロクな奴はいません。いい映画を作るというのは、十把一絡げの映画を作ることです。その年のベスト10で1位や2位になる映画は、20年後には残らないものが多い。多数決で選ばれる映画や小説にロクなものはなく、同時代から嫌われる映画にかぎって、後世に名を残す可能性を秘めている。
 嫌われようと目指すのは禁物ですが、嫌われるのを恐れてはなりません。



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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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