児玉聡・なつたか『マンガで学ぶ生命倫理』


マンガで学ぶ生命倫理: わたしたちに課せられた「いのち」の宿題マンガで学ぶ生命倫理: わたしたちに課せられた「いのち」の宿題
(2013/02/10)
児玉 聡、なつたか 他

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 児玉聡・なつたか著『マンガで学ぶ生命倫理――わたしたちに課せられた「いのち」の宿題』(化学同人/1050円)読了。

 タイトルのとおり、生命倫理(バイオエシックス)の諸問題について、マンガと文章でわかりやすく解説した入門書である。

 生命倫理学が専門の児玉(京都大学大学院准教授)が文章とマンガの原案を担当し、「なつたか」というマンガ家が作画を担当している。

 私は子どものころ、「学研まんが ひみつシリーズ」という学習マンガ・シリーズが好きであった(いちばん好きだったのは内山安二の『コロ助の科学質問箱』)。あのシリーズは、いま思い出しても優れた学習マンガ揃いだったと思う。
 「ひみつシリーズ」にかぎらず、たいていの学習マンガは先生役の「博士」と子どもたちのやりとりによって進行していくものである(そして、博士はたいてい「~なのじゃよ」といった言葉遣いをする。たぶんお茶の水博士がルーツ)。

 しかし、本作はそうではない。加奈美という女子高生を主人公にしたストーリーマンガになっているのだ。

 マンガと文章が半々くらいの割合。一つのシーンが終わるごとに、そのシーンに関連する生命倫理のいくつかのトピックスが文章で解説されていく。
 文章はベタ流しにせず、トピックごとにコラム的にまとめられているので、たいへん読みやすい。

 章立ては次のようになっている。

1章 生殖医療「姉の三人目の子ども」………生殖補助医療はどこまで使ってよいのか?
2章 がん告知とインフォームド・コンセント「祖父のお見舞い」………患者に本当のことを伝えるべきか、嘘をつくべきか?
3章 中絶と胎児の権利「同級生の妊娠」………中絶は「殺人」なのか?
4章 能力・肉体の改造(エンハンスメント)「試験勉強中の誘惑」………薬を用いて能力を高めることは許されるか?
5章 終末期医療と安楽死「父の葛藤」………安楽死は許されるのか?
6章 生体臓器移植「優介の告白」………家族に負担をかける生体臓器移植は正しいのか?
7章 クローン技術「ペットは二代目」………「クローン人間」をつくることは許されるか?
8章 ES 細胞とiPS 細胞「ケヴィンの弟」………幹細胞研究は人間の未来をどう変えるか?
9章 寿命と永遠の命「加奈美の不安と願い」………永遠に生きられるのは望ましいことか?
10章 脳死と臓器移植「あいつが来ない日」………脳死は人の死なのか?

 

 これを見ればわかるとおり、生命倫理の問題が網羅的に取り上げられており、各問題のおもな論点も紹介されている。
 文章部分は短いながらも手際よく的確にまとめられ、生命倫理入門として本格的な内容。対象読者層は10代後半の若者なのだろうが、大人が読んでも十分ためになる。

 ただ、学習マンガとしても優れているかといえば、ちょっと疑問符。

 なつたかの絵柄は「萌え絵」ではなくすっきりと落ち着いたもので、好感がもてる。また、短いページ数という制約のなかで、がんばってストーリーを展開してもいる。

 だが、1人の女子高生の周囲で生命倫理をめぐる問題が次から次へと起きる(姉が着床前診断による男女産み分けを検討していたり、同級生の1人がクローン犬をペットにしていたり、別の同級生が事故で脳死状態になったりする)のは、やはりどうしようもなく不自然である。

 そのため、マンガとして感動したり、主人公に感情移入したりするところまではいかない。
 本の成り立ち上、仕方ないといえば仕方ないし、「名探偵コナンの周囲で毎週殺人事件が起きるのは不自然だ!」と目くじら立てるみたいな野暮な指摘ではあるが……。

 ストーリーマンガにするという試みがチャレンジングなのは認めるが、やっぱ学習マンガの王道は「博士と子どもの問答形式」じゃないかなあ。

■関連エントリ→ 小林亜津子『看護のための生命倫理』レビュー

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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