町山智浩『トラウマ恋愛映画入門』


トラウマ恋愛映画入門トラウマ恋愛映画入門
(2013/09/05)
町山 智浩

商品詳細を見る


 町山智浩著『トラウマ恋愛映画入門』(集英社/1260円)読了。

 前の『トラウマ映画館』がすごく面白かったので、今回は発売と同時に購入。
 『小説すばる』連載の単行本化。1回につき1本の恋愛映画を取り上げたシネ・エッセイである。

 恋愛映画といっても、『愛のコリーダ』『赤い影』『アイズ・ワイド・シャット』などが取り上げられていることが示すように、甘々の恋愛映画は皆無に等しい。苦い恋愛映画、激辛の恋愛映画、果ては「えっ、これを恋愛映画に入れるわけ?」と驚くような作品が多く取り上げられているのだ。まさに「トラウマ恋愛映画」揃い。

 序文「恋愛オンチのために」からして、感動的な名文だ。そこにはこんな一節がある。

 大部分の人にとって、本当に深い恋愛経験は人生に二、三回だろう。たしかに何十もの恋愛経験を重ねる人もいるが、その場合、その人の人生も、相手の人生も傷つけずにはいない。そもそも、恋愛において、そんなに数をこなすのは何も学んでいない証拠だ。トルストイもこう言っている。
「多くの女性を愛した人間よりも、たった一人の女性だけを愛した人間のほうが、はるかに深く女性というものを知っている」
 恋愛経験はなるべく少ない方がいい。でも、練習できないなんて厳しすぎる?
 だから人は小説を読み、映画を観る。予行演習として。
 もちろん、映画や小説には、恋愛のロマンティックな部分だけを見せるエンターテインメントもある。それは甘いだけのお菓子と同じで栄養がない。たまにはいいけどね。
 そういうロマンスの最大の問題は、好きになった同士が紆余曲折の後、結ばれたところで「めでたしめでたし」で終わってしまう点だ。本当はそこからが恋愛の始まりなのに、そこからが大変なのに、それを教えてくれる映画は少ない。
 この本に集めた映画は、甘くない。ほとんどが苦い失敗例だ。



 本書は優れた映画ガイドであると同時に、含蓄深い恋愛論でもある。
 エッセイ各編のサブタイトルが、格調高い箴言のようでシビれる。たとえば――。

女たらしは愛を知らない点で童貞と同じである

不倫とは過ぎ去る青春にしがみつくことである

セックスとは二人以外の世界を忘れることである

愛は勝ってはいけない諜報戦である



 これらの言葉に「ピンときた」人なら、本書は読むに値すると思う。
 観たことのない映画についてのエッセイでも十分愉しめる内容なので、映画マニアならずともオススメ。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

里親募集中

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
31位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
22位
アクセスランキングを見る>>