渋谷直角『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』


カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生
(2013/07/30)
渋谷 直角

商品詳細を見る


 渋谷直角の『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』(扶桑社/1150円)を読んだ。

 前に読んだエッセイ集『直角主義』がなかなか面白かった著者(ライター兼マンガ家)による、今回は全編マンガの単行本。
 買おうかどうしようか迷っていたところ、町山智浩が絶賛していたことに背中を押され、ゲット。

 元は、「ゲリラ的に手売りしていた自主制作のコピー漫画」(印刷会社を経由せず、自分でコピーして作った本)だったもの。それが評判を呼び、描き下ろし作品も含めて正規の単行本化に至ったのだ。

 著者はプロパーのマンガ家ではないから、絵柄はヘタウマ風ではあるが、なかなか捨てがたい味わいがある。

 収録作品は表題作のほか、「空の写真とバンプオブチキンの歌詞ばかりアップするブロガーの恋」、「ダウンタウン以外の芸人を基本認めていないお笑いマニアの楽園」、「口の上手い売れっ子ライター/編集者に仕事も女もぜんぶ持ってかれる漫画 (MASH UP)」の全4編。
 ほかに、「テレビブロスを読む女の25年」という見開き2ページのマンガもオマケについている。

 各作品のタイトルだけでご飯が3杯いけるくらいの味わい深さ。これらのタイトルを見て「ピンときた」人たちにとっては、期待を裏切らない内容といえる。

 帯には、「自意識の不良債権を背負ったすべての男女に贈るサブカルクソ野郎狂想曲!!」というスゴイ惹句が躍っている。この惹句も秀逸で、内容を的確に表現している。

 サブカル者のハシクレとして、またライター業界の片隅に身を置く者として、身につまされることこのうえないマンガ。

「オレさ…劇団辞めて群馬に帰るんだ…」
「オレも…ライター辞めて親父の土建屋手伝うことにした」

 

 などというセリフの一つひとつが、心にヒリヒリと痛い。
 個人的にいちばんヒリヒリしたのは、「口の上手い売れっ子ライター/編集者に仕事も女もぜんぶ持ってかれる漫画 」。主人公の駆け出しライターの挫折が、まったく他人事ではない。
 「かけだしのライターどころか…かけ出すことすらできなかったな…ハハ…」というモノローグに胸打たれた。

 各主人公の部屋の本棚やCD棚の中身(一つひとつ作品タイトルやアーティスト名が書かれている)などのディテールまでがよく練られていて、いちいち楽しい。

 かなり読者を選ぶマンガで、本作の世界に「縁なき衆生」にはまったく面白くないだろう。
 しかし、元と現役の別を問わず、サブカル者なら必読という感じ。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
30位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
24位
アクセスランキングを見る>>