NHKスペシャル取材班『未解決事件 オウム真理教秘録』


未解決事件 オウム真理教秘録未解決事件 オウム真理教秘録
(2013/05/29)
NHKスペシャル取材班

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 NHKスペシャル取材班著『未解決事件 オウム真理教秘録』(文藝春秋/1680円)読了。

 昨年放映され、実録ドラマ仕立ての構成が話題を読んだ「NHKスペシャル」の単行本化。
 といっても、本書はドラマ仕立てではなく、取材の舞台裏を詳細に明かした内容となっている。取材にあたった記者やディレクターが、各章を分担して執筆。番組に描ききれなかった部分も盛り込まれている。
 私は元の番組を観ていないが、この本だけでも十分に独立した価値をもつ内容である。



 「NHKスペシャル」はNHKの看板番組だから、取材には時間も予算もマンパワーも潤沢に注ぎ込むことができる。本書を読んでも、我々ライターが雑誌等で行う取材とはケタ違いの手間ヒマがかけられているとわかる。たとえば、オウム事件にかかわった捜査関係者だけでも150人以上を取材しているという。

 また、NHKという看板のもつ力も、やはり相当なものなのだろう。本作はテーマからして警察批判の側面を持たざるを得ないわけだが、にもかかわらず、すでに定年退職している人を中心に、多数の警察関係者が取材に応じている。NHKの看板の力ゆえだろう。

 つまり、これは二重の意味で「NHKにしかなし得ない仕事」であった。また、「NHKがやってしかるべき仕事」でもあった。オウム的なテロの危険性は今後いっそう高まるはずで、その検証作業には我が国にとっても高い意義があるからだ。

 どの章も読み応えがあるが、圧巻は警察のオウム捜査の舞台裏を明かした第2章「オウムVS警察 知られざる攻防」。それに次ぐのが、第3章「オウム武装化の真相」である。

 第2章では、坂本弁護士一家失踪事件を捜査した神奈川県警、松本サリン事件を捜査した長野県警、オウムの拠点があった波野村で捜査にあたった熊本県警などが、地下鉄サリン事件の前からオウムの危険性を十分認識していたことが明かされる。
 にもかかわらず、各県警と警視庁がタテ割りになった組織体制ゆえ、情報が共有されず、踏み込んだ捜査には至らなかった。

 今回の取材で、捜査の最前線にいた捜査員たちはオウムの闇に早い段階で気付き、強い危機感を持っていたことが見えてきた。その危機感が警察組織のなかで共有され生かされていれば、地下鉄サリン事件は防げたかもしれない。事件から十七年を経て、取材班が達した結論だ。



 第3章は、NHKが独自に入手した700本以上に及ぶ録音テープ(麻原の説法や幹部との対話などを記録したもの。元は記録魔の教団幹部が所有していたもので、その幹部はあまりになんでも録音することが理由で危険視され、左遷されたという)の詳細な解析を中心とした内容。

 解析によって、「オウムは衆院選惨敗を契機に武装化路線に転じた」とするこれまでの定説が覆されるところが衝撃的だ。麻原は教団発足当初から、すでに武装化を考えていたというのだ。

 数あるオウム関連本の中でも、屈指の充実した内容をもつ一書。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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