ジョン・T・カシオポほか『孤独の科学』


孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか
(2010/01/20)
ウィリアム・パトリック、ジョン・T・カシオポ 他

商品詳細を見る


 一昨日から昨日は、取材で長野市と松本市へ――。

 松本に行くのは3度目だが、今回改めて「いい街だなあ」と思った。
 おしゃれな喫茶店などが多い一方、歴史の重みも感じさせるし、街全体がすごく洗練されていて文化的なのだ。当然、景色も気候もよいし……。長野市より松本市のほうが断然好きだな(長野市のみなさん、すいません)。

 
 行き帰りの電車で、ジョン・T・カシオポ、ウィリアム・パトリック著、柴田裕之訳『孤独の科学――人はなぜ寂しくなるのか』(河出書房新社/2940円)を読了。

 心理学者で、「社会神経科学」の創始者の一人である著者(カシオポ)が、長年の研究をふまえ、孤独感が人間の心と体にどのような影響を与えるかをさまざまな角度から明かしたもの。
 言いかえれば、「人はなぜ他者とのつながりを求めずにはいられないか?」のメカニズムを研究した書でもある。

 私は一人でいることが苦にならないタチであり、だからこそフリーライターという職種を選んだという面もある(そもそも、フリーライターの重要な適性の一つは「孤独への耐性」だ)。ゆえに、「孤独感がいかに心と体に悪いか」が明かされた本書を読んで、打ちのめされたような気分になった。

 本書によれば、孤独感は「高血圧や運動不足、肥満、喫煙に匹敵するほどの影響を健康に与える」という。そして、孤独がいかに心と体を蝕むかが、客観的データから「これでもか」とばかりに説明されていく。

 中年になると、孤独な人はそうでない人よりもアルコールの摂取量が多く、活発に運動をしない。そして食事には脂肪分が多い。睡眠は孤独でない人と時間は同じでも効率が悪い。つまり、回復力に乏しいわけで、日中の疲れを余計に感じる、と報告している。



 私たちは進化の作用によって、仲間といれば安全を感じ、心ならずも独りになったときは危機感を覚えるようにできているので、孤立の感覚と脅威の感覚は互いに強め合い、警戒心を募らせて持続させる。



 孤独な人は幸せな人の顔写真に特異な反応を示すことがわかった。通常、幸せな人の顔を見ると脳の報酬領域が活性化するが、孤独感はこの反応を鈍らせるのだ。



 最後の引用部分にはゾッとさせられる。孤独でない人は他者の幸せをも自らの喜びと感じられるのに、孤独な人にはそのような共感能力が乏しい、というのだ。

 本書は「人は独りでは幸せになれない」という昔からの真理を、科学のメスを入れることで改めて立証したものといえる。そして、人の心と体を蝕む慢性的な孤独感から、いかにして抜け出せばよいかの簡単な処方箋も示されている。

 喉の渇きが、水分補給を忘れないようにという刺激であるように、孤独感は人間がどれほど互いに頼り合っているかを思い出させてくれる刺激だ。ポジティブな心理的順応をすれば、すぐに効果が顕れ、報われる。



■関連エントリ→ 「孤独」をめぐる世代間ギャップ

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。56歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
34位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
25位
アクセスランキングを見る>>