アリス・ロバーツ『人類20万年 遙かなる旅路』


人類20万年 遙かなる旅路人類20万年 遙かなる旅路
(2013/05/15)
アリス ロバーツ

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 アリス・ロバーツ著、野中香方子訳『人類20万年 遙かなる旅路』(文藝春秋/1995円)読了。書評用読書。

 英BBCで放映された大型科学ドキュメンタリー番組の書籍化。
 番組のパーソナリティとして出演した医師・科学者(バーミンガム大学教授で、古生物病理学博士・解剖学者・人類学者)が、自ら著者となって筆をとっている。



 もとの番組はYouTubeでも観ることができる。それを観ればわかるとおり、著者は清楚でナチュラルな印象の“植物系美人”で、すこぶるチャーミング。
 ただ、版元がそのことを「売り」にして、特設サイトや本のカバーにまで「美人人類学者」と謳うのはどうかと思うけど(笑)。

 著者の容姿のことはさておき、中身もたいへん面白い。本として独立した価値をもっており、元の番組を観ていなくても十分楽しめる。

 私たち現生人類がアフリカを出て世界に広がり、最後にアメリカ大陸に到達するまでのはるかな道のりを、著者が各国の遺跡等を見て回り、その地で研究する第一線の科学者たちに取材しながらたどっていく内容だ。

 私がいちばん知的興奮を覚えたのは、第4章「未開の地での革命」。
 この章では、現生人類がヨーロッパに到達し、ネアンデルタール人(現生人類とは別種であることがわかっている)とニアミスし、けっきょくはネアンデルタール人たちが歴史から消えていくまでの過程がたどられる。

 脳の容量は現生人類を上回り、体格でも優っていたネアンデルタール人が滅び、現生人類が生き残ったのはなぜか? 著者はその理由を、現生人類のほうが優れた文化を築いていたことに見出す。芸術の原型、宗教の原型を生み出したのは現生人類だったのだ。

 芸術などの文化というと、とかく「現実生活の役には立たないもの」ととらえられがちだ。しかし、現生人類は文化的に優れていたからこそ、ネアンデルタール人よりも創意工夫によって困難に打ち勝つ力、協力しあうネットワーク力をもっていた。だから生き残ったのだ。
 「文化の力」を改めて実感させるこの章は、すこぶる感動的である。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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