渡邊十絲子『新書七十五番勝負』


新書七十五番勝負新書七十五番勝負
(2010/01/16)
渡邊十絲子

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 今日は、参院選の期日前投票へ――。

 投票所となった「立川市子ども未来センター」(市役所移転の跡地にできた新しい施設)の中にある「立川まんがぱーく」に、投票ついでに初めて行ってみた。
 15歳以上400円、小・中学生200円、未就学児無料で1日いられる、約3万冊のマンガが読み放題の施設。マンガ喫茶のように暗く狭い場所ではなく、明るく開放的なつくりなのがグー。

 マンガのラインナップは当然子ども向けが多いわけだが、青年マンガなどもけっこうある。『殺し屋1』とか、「子どもに読ませるのはちょっと」という作品もある(笑)。
 近所だから、また行ってみよう。


 渡邊十絲子著『新書七十五番勝負』(本の雑誌社/1260円)読了。

 渡邊の著書を読むのは3冊目。これは『本の雑誌』連載の新書評の書籍化だ。

 1冊の新書につき3ページほどの短い書評が並んでいる。書評集であると同時に読書論でもあり、読書の愉しみを飽かず語りつづけた読書エッセイでもある。

 文章が、紹介する新書とは関係のない自分語りから始まるものが多い。新聞書評などではあり得ない、『本の雑誌』連載ならではの自由なスタイルだ。

 「この書き出しからどうやって新書紹介に着地するんだ?」とハラハラしながら読み進めると、アクロバティックな跳躍のすえ、見事に着地。紹介する新書の魅力の核を正確に伝える内容になっている。なかなかの芸だと思う。

 当ブログに感想をアップしている新書もけっこう取り上げられていて、それを読むと著者の書評子としての力量がわかる。私にはできない形でその新書の魅力を伝える文章が少なくないからだ。

 たとえば、池谷裕二氏の名著『進化しすぎた脳』を取り上げた回。
 著者は同書を、各紙誌の書評が「高度に専門的な内容を平易に説いた点が珍しい」と絶賛したことに異を唱える。

 自然科学の学者が「自分の専門分野の最新知見を平易に書く」のは、いまや当たり前。「狭い専門分野のフェンスをふみこえて科学の思想を語る」ことにこそ拍手を送るべきである。



 つまり、科学の細分化が行きつくところまで行き、「すぐ隣りの研究分野についてさえうっかりモノを言うなんてリスクはおかせないという学者が多数派」のご時世にあって、脳の機能のあらゆる側面にあえて言及したところこそが、同書の最大の美点なのだ、と……。
 この指摘には、なるほどと膝を打った。

 その他、印象に残った一節を引用する。

 真の表現とは、受け手を変化させる前にまず、表現者自身を変化させるものでなくてはならないとわたしは思う。
 「だいじょうぶだよ、そばにいるから」式のポエムをわたしが軽蔑するのは、それは受け手の心を励まし和ませるテクニックだけで書く言葉だからだ(その効果すらあやしいけどね)。表現者自身は、心の動く現場に立ち会っていない。そのポエムを書くことによって表現者自身の立脚点が危うくなったり、心が揺らいだりしない。安全地帯にいるのである。動かないのだから進化も成長もない。そんなの表現といえない。



 徹底的にわかりやすいのが善、アホでもわかる子どもでもわかる猿でもわかる、ということを絶対的価値として信奉しているのは、世の中でもTVと出版社だけなのである。



 国民総消費者となったこの末期的日本社会では、われわれは毎日、どんなささいな行動も、「それはなんの役にたつのか、カネを払う価値があるのか」と互いに監視しあっている。でももううんざりだ。現在「それはこれこれの仕組みでこういうことの役にたつ」とわかっているものなんて、メシを食っていくための色褪せたルーティンである。なんの役に立つのか皆目見当がつかないものからしか、新しい価値、つまり未来は生まれない。



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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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