西田亮介『ネット選挙』


ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容
(2013/05/31)
西田 亮介

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 西田亮介著『ネット選挙――解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社/1575円)読了。仕事の資料として読んだ。

 7月の参院選からいよいよ解禁になる「ネット選挙」(※)について、1983年生まれの若手社会学者(立命館大学准教授)がさまざまな角度から解説・分析したもの。

※正しくは「選挙運動におけるネットの利活用」の解禁。ネット投票が解禁になるわけではない。……ということは、大半の人がわかっていると思うけど。

 ネット選挙を解説した類書はほかにもあるが、本書はとてもよくできているので、「解禁前に、とりあえず解説書を1冊読んでおきたい」という向きにはこれがオススメ。

 この手の時事的な本の常で、突貫工事で書き上げた(あとがきによれば正味1ヶ月ほどで書いたという)ようだが、それにしてはよくまとまっている。ネット選挙の先進国であるアメリカ、韓国との比較や、解禁が論じられ始めてからの約20年間の歩み、解禁後に何がどう変わるかについての展望などが、バランスよく詰め込まれているのだ。

 そして、そのような事実面での解説に加え、ネット選挙解禁の思想的意味についても深堀りしているのが、本書の特長である。

 日本の公職選挙法が志向してきた「均質な公平性」と、インターネットの設計思想である「漸進的改良主義」には、本来相容れない部分が大きい。ゆえにネット選挙の解禁は、じつは日本政治そのものに「価値観の転換」を迫るものであり、制度上の変更であるにとどまらず、大きな思想的意味をもっている……というのが著者の見立て。
 私自身は「へえ、そんなもんですかね」と思うのみで、著者の問題提起はピンとこないのだが。

 ネット選挙解禁までの歩みをたどった3~4章は、資料的価値はあるだろうが、退屈。
 逆に、解禁後の変化を予測した7章と、ネット選挙解禁の意義を民主主義という大きな枠組みの中で考察した終章(全体のまとめ・結論でもある)は、刺激的で面白かった。

 「ネット選挙解禁で、これまでより選挙にお金がかからなくなる」とか、「ネット選挙が解禁されれば若者が選挙に目を向けるようになり、投票率が上がる」などという誤解(少なくとも「そうとはかぎらない」こと)が、具体的データから正されていくのも面白い。

 たとえば、韓国ではネット選挙解禁後、大統領選の投票率はむしろ下がり、選挙運動の費用は下がっていないという。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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