権徹『歌舞伎町』


歌舞伎町歌舞伎町
(2013/02/08)
権 徹

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 権徹(ゴン・チョル)著『歌舞伎町』(扶桑社/1995円)読了。

 著者は、過去16年にわたって新宿歌舞伎町をホームグラウンドとしてきたドキュメンタリー写真家。以前にも『歌舞伎町のこころちゃん』という好写真集を出している。
 本書は、著者が歌舞伎町回りの集大成としてまとめたフォト・ルポルタージュ集。オールカラー256ページにわたって、1990年代後半から現在までの歌舞伎町のさまざまな顔が映し出されている。

 著者は狭い歌舞伎町を、ほかの仕事がないかぎりは週6日・1日3万歩も歩き回り、数々の決定的瞬間をとらえてきた(元は韓国海兵隊でスナイパーをしていたという著者は、銃をカメラに持ち替えた「歌舞伎町スナイパー」と呼ばれているのだそうだ)。

 まるで映画の一場面のようなすごい写真が目白押しだ。
 たとえば、ヤクザと黒人がそれぞれ自転車と椅子を振り上げて乱闘する場面。
 麻薬の売人が警察から逃げ、取り押さえられるまでの逃走シーン。
 ただの食い逃げ犯を捕まえた数人の警察官が、靴で顔を踏みつけたり、髪の毛を引っぱったりする過剰行為をした瞬間。

 いちばん目を引くのはその手の「事件もの」だが、ほかにも、ほのぼのする写真、女たちの艶やかな姿をとらえた色っぽい写真など、多彩な作品がぎっしり詰め込まれている。

 うっとりするほど美しい写真も多い。とくに、歌舞伎町の夜を俯瞰でとらえた一連の写真は、ぎらぎらした猥雑さと静謐な美しさが同居していて、素晴らしい。
 ちなみに、カバーに使われているのは新宿コマ劇場の最終公演(2008年末)を写した写真なのだが、北島三郎の公演がまるで『未知との遭遇』のワンシーンのように撮られていて、なんとも不思議な味わいだ。

 土地柄、ヤクザに怒鳴られてカメラを壊されたり、援交少女を注意して逆に警察に通報されたり(少女が「パンチラを撮られた」と嘘をついた)と、危ない目にもずいぶん遭っている著者。それでも、フォト・ジャーナリストとしての矜持を保ち、どんな場面でも毅然とふるまう姿がすがすがしい。

■参考→ ドキュメンタリー写真家 権徹(著者のサイト。本書所収の写真の一部が見られる)

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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