船橋洋一『カウントダウン・メルトダウン』


カウントダウン・メルトダウン 上カウントダウン・メルトダウン 上
(2013/01/27)
船橋 洋一

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 船橋洋一著『カウントダウン・メルトダウン』(文藝春秋/上下各1680円)読了。書評用読書。

 日本を代表するジャーナリストの著者が、福島第一原発事故の最も過酷な時期――発災からの約20日間に照準を絞り、その舞台裏を描き尽くしたノンフィクション。計1000ページ近い大著だ。

 日米の要人300名余に対する取材をふまえ、「戦後最大の危機」の全貌が、鮮烈な臨場感をもって多面的に再現されている。デイヴィッド・ハルバースタムの諸作を彷彿とさせる、重厚な力作である。

 福島第一原発事故については、すでにノンフィクションや当事者の回顧録が多数出版されているが、本書はその決定版といえる。今後長きにわたって、事故を振り返る際の基本文献となるに違いない。

 積み重ねられていく事実の背後に浮かび上がるのは、原発事故があぶり出した日本の組織社会の病弊そのものだ。日本の官僚組織(本書ではおもに経産省と文科省)が、平時はともあれ、非常時にはいかに役立たずであるかが如実に示されている。
 東電も、私企業でありながら官庁以上に官僚的な組織であり、そのダメさかげんが執拗にリフレインされて描かれる。
 読者の大半が思うことだろうが、中央官庁よりも自衛隊のほうが、組織としてよほどまともである。

 ただし、東電にも、福島第一原発の吉田昌郎所長(当時)のように勇敢で優れたリーダーはいた。民主党政権の中にも、本気で闘った人物はいた。著者は、事故対応の当事者たちの言動を、中立的視点から是々非々で評価していく。
 当時の首相・菅直人に対しては、そのリーダーシップの欠如などについて率直な批判がなされるが、それでも評価すべき点は虚心に評価している。

 その意味で本書は、リーダー論・組織論・日本社会論としても読みごたえがある。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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