佐藤優『読書の技法』


読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門
(2012/07/27)
佐藤 優

商品詳細を見る


 佐藤優著『読書の技法――誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門』(東洋経済新報社/1575円)読了。

 書名のとおり、佐藤流読書術を開陳したもの。
 さして目新しいことを言っているわけではなく、ごくオーソドックスな読書術という印象。立花隆が『ぼくはこんな本を読んできた』や『「知」のソフトウェア』で述べている読書術に近い。

 本書での佐藤の主張は、おおむね納得のいくものである。たとえば、次のような指摘――。

 重要なことは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになることだ。そうでなくては、本物の知識が身についたとは言えない。



 すでに十分な知識がある分野か、熟読法によって付け焼刃でも一応の基本知識を持っている分野以外の本を速読しても、得られる成果はほとんどない。知らない分野の本は速読も超速読もできないというのは、速読法の大原則だ。



 速読はあくまで熟読する本を精査するための手段にすぎず、熟読できる本が限られるからこそ必要となるものだ。速読が熟読よりも効果を挙げることは絶対にない。



 ビジネスパーソンの場合、テーマは仕事をするうえで、現在、もしくは将来必要となる事項がテーマとなる。教養のための外国語とか歴史というような、動機があいまいなままだらだら学習することは時間と機会費用の無駄なのでやめたほうがいい。



 ただ、第5章「教科書と学習参考書を使いこなす」は、水増しがひどくていただけない。
 高校の教科書や受験用参考書が「大人の学び直し」に役立つというのはそのとおりだが(私も日本史や世界史の参考書を座右に置いている)、その学び方の具体例を一章丸ごと割いて延々と挙げるのはやりすぎ。ページ数稼ぎの手抜きとしか思えない。

 あと、佐藤にはクダラナイ本を大仰な言葉で絶賛するヘンなクセがあるのだが(過去の著書でも、『負け犬の遠吠え』やSM小説『花と蛇』を絶賛していた)、本書の第6章「小説や漫画の読み方」にもその悪癖が出ている。
 なんと、『クレヨンしんちゃん』を絶賛していたりする。しんちゃんの母親・みさえが「ユング心理学で言うところの『グレートマザー』だ」とか、ギャグとしか思えない持ち上げっぷりである。

 同じ章では水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』も取り上げている。私も『鬼太郎』は名作だと思うが、これについても佐藤の持ち上げ方はかなりヘンだ。いわく――。

 高度経済成長以後の21世紀型の生き方として、ビジネスパーソンがねずみ男から学ぶべき点は多い。



 それと、「オレはこんなものすごい読書家なんだぜ」と言いたげなハッタリ的記述も目立つ。
 ただ、それが大前研一や勝間和代の自慢話のようにイヤミな感じがしないのは、ある種の人徳であろうか。

 ……と、ケチをつけてしまったが、読書意欲をかき立てる好著ではあり、読書好きなら一読の価値はある。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
30位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
24位
アクセスランキングを見る>>