西岡文彦『ピカソは本当に偉いのか?』


ピカソは本当に偉いのか? (新潮新書)ピカソは本当に偉いのか? (新潮新書)
(2012/10/17)
西岡 文彦

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 西岡文彦著『ピカソは本当に偉いのか?』(新潮新書/714円)読了。

 多摩美の教授で版画家の著者による、一般向けの芸術論。
 タイトルどおりピカソの話が多いのだが、たんなるピカソ論でもピカソの評伝でもない(ただし、ピカソの生涯と業績が概観できるように書かれてはいる)。
 ピカソは現代美術の代表格としてクローズアップされているのであって、本書のメインテーマは“現代美術とそれ以前の美術では、どこがどう違うのか?”ということである。

 美術にくわしい人にとっては、本書の内容はあたりまえのことばかりかもしれない。が、門外漢の私には非常に新鮮で面白かった。

 ピカソの代表作『アヴィニョンの娘たち』について、著者は次のように言う。

 画面には、学者が学会で新しい学説を発表する時のような気負いと先鋭性がみなぎっています。いわば、今後の絵画はいかにあるべきかという課題に対するピカソ理論の発表のようなものですから、学会論文と同じで素人に理解できないのは、むしろ当然でさえあったのです。
 おそらく、この時のピカソにとって素人の理解などは眼中になかったでしょう。画商や批評家といった専門家に対して、絵画の未来を担う「前衛」としてピカソ自身の立場を知らしめ、ゆくゆくは美術館に入ってしかるべき芸術の担い手としての認知を確立することのほうが、はるかに大切だったからです。



 印象派が「タッチ」つまりは筆触を強調することで、絵画を写実から解放したのに対して、後期印象派はこのタッチを各人が独自に工夫することで、個性の表明としての「スタイル」つまりは様式というものを確立したわけです。
 二十世紀絵画の特色は、このスタイルが「イズム」つまりは芸術的な主義主張として語られ、学会における学説論争のように画壇をにぎわせた点にあります。
 ピカソの『アヴィニョンの娘たち』を出発点としたキュビズムは、そうしたイズムの代表格で、後期印象派のセザンヌが確立したスタイルをさらに先鋭化して誕生したこのイズムによって、二十世紀絵画の方向は決定されることになりました。

 

 なるほどなるほど。すこぶるわかりやすい。
 ピカソをフィルターにした平明な現代絵画入門として、門外漢ほど一読に値する好著。この著者のほかの本も読んでみよう。

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コメント

深見東州の一言
深見東州です。
とてもいいと思います。
  • 2013-02-17│16:43 |
  • 深見東州 URL│
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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