小川美潮『ウレシイノモト』『檸檬の月』


ウレシイノモトウレシイノモト
(2005/04/27)
小川美潮

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 小川美潮(みしお)の1990年代のアルバム『ウレシイノモト』と『檸檬の月』を、中古で購入。

 最近は新譜にあまり食指が動かず、もっぱら、好きなアーティストの聴き逃がしていた旧作を中古で安く入手しては楽しんでいる私である。中古だとアーティスト自身の収入にはつながらないので、その点がちとうしろめたいのだが……。

 「ジャパニーズ・エスニック・テクノ」とでもいうべき独自の世界を創り上げた名バンド「チャクラ」の歌姫だった小川美潮は、チャクラ解散後に数枚のソロアルバムを発表している。
 そのうち、1991年発表のソロ第2作『4to3』は名盤の誉れ高く、私も大好きなアルバム。

 今回入手した『ウレシイノモト』と『檸檬の月』は、『4to3』に次いで92、93年にそれぞれ発表されたソロ第3~4作にあたるもの。

 『ウレシイノモト』は、発売当時某誌にディスク・レビューを書いたことがある。そのときレコード会社にもらったサンプル音源はカセットテープ(!)で、もうどこかに行ってしまった。
 サンプルで聴いた感想は「悪くないけど、『4to3』の完成度には遠く及ばないなあ」というものだった。
 だが、22年の時を経て聴き直してみたら、記憶にある印象よりもはるかに素晴らしいアルバムなので驚いた。

 とくに、「きもちのたまご」「LINK」「走れ自転車」「MARBLE」の4曲のなんという心地よさ。
 ポップでキャッチーなのに、複雑なリズムに凝りまくったアレンジ。おもちゃ箱をひっくり返したようなカラフルで楽しいサウンドの上を、自在に浮遊する天衣無縫なヴォーカル……『4to3』と甲乙つけがたい。埋もれさせてしまうには惜しい名盤である。

 もう一枚の『檸檬の月』は、今回初めて聴いた。
 ジャケットの小川美潮は白いワンピースに白い日傘を差して、ようすのいい上流夫人のよう。それまでの「不思議ちゃん」イメージをくつがえした印象。そのジャケットにふさわしく、内容も落ち着いたヴォーカル・アルバムに仕上がっている。「正統派歌ものポップス」という印象。

 アレンジをおもに手がけているのは、それまでのソロ・アルバム同様、チャクラ時代からの盟友・板倉文。そのわりには、いつもの板倉らしい凝ったアレンジが見られないなあ。フツーすぎてつまらないなあ(ただし、ほとんどプログレな「SHAMBHALINE」なんて曲もあったりするが)。
 ……と最初は思ったのだが、何度か聴きこむうちに、一見フツーで地味なこのアルバムの奥深い味わいがわかってきた。アレンジが比較的シンプルな分、小川美潮のヴォーカルがくっきりと浮かび上がるアルバムなのである。

 小川美潮のヴォーカルは、声といい歌い方といい、それ自体が圧倒的な魅力をもっている。「癒し系」という言葉はすっかり手垢がついてしまったけれど、彼女のヴォーカルこそ語の本来の意味で究極の「癒し系」だと思う。聴いていると心のコリがほぐれてくる。

 ……というわけで、旧作を聴いてすっかり小川美潮に惚れ直した私。
 1984年のファースト・ソロ・アルバムも、ボーナス・トラックが7曲も入ってリイシューされたし、2011年には久々の新作『起きてください』も発売されたし、またしばらく追いかけてみることにしよう。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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