岡本太郎『今日の芸術』


今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)
(1999/03)
岡本 太郎

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 岡本太郎著『今日の芸術――時代を創造する者は誰か』(光文社知恵の森文庫/520円)読了。

 1954年に刊行された一般向けの芸術論。当時ベストセラーとなり、「一九五◯年代の若い画家たちに、強い影響を与えた」(赤瀬川原平の解説より)という。
 元本は「カッパ・ブックス」の一冊として出たものだから、堅苦しさや難解さはない。岡本の文章もユーモアとウィットに富んだもので、すこぶる読みやすい。

 「芸術とは何か?」「芸術の価値とは何か?」という大きな問いに、真正面から答える本。そのために西洋美術史の背骨部分をたどり、日本文化の特徴についても論じた内容になっている。
 岡本太郎のことだから、教科書的な西洋美術史/絵画の見方入門にはなっていない。なにしろ、「今日の芸術は、うまくあってはならない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない」というのが、本書で岡本が主張する「芸術における根本条件」なのだから。

 といっても、けっして奇をてらった内容ではない。むしろ“真ん中高めの直球”という趣の熱い芸術論なのだが、たぐいまれなる自由な精神をもつ岡本ゆえ、ストレートな論も世間の常識からは遠く離れて見えるのだ。

 刊行後60年近くを経てなお、芸術論として鮮度を保つと同時に、芸術に仮託した人生論としても読める。絵を描かない私でさえ、読んでいて何度も勇気づけられる思いがした。

 印象に残った一節を引用する。

 芸術におけるほんとうの意味の新しさということは、へんな言い方ですが、新しいということになる以前にこそあるのです。すこし極端にいえば、新しいといわれたら、それはもうすでに新しいのではないと考えたってさしつかえないでしょう。ほんとうの新しいものは、そういうふうに新しいものとさえ思われないものであり、たやすく許されないような表現のなかにこそ、ほんとうの新鮮さがあるのです。



 まことに芸術はゆきづまっている。ゆきづまっているからこそ、ひらける。そして逆に、ひらけたと思うときにまたゆきづまっているのです。そういう危機に芸術の表情がある。
 人生だって同じです。まともに生きることを考えたら、いつでもお先まっくら。いつでもなにかにぶつかり、絶望し、そしてそれをのりこえる。そういう意志のあるものだけに、人生が価値をもってくるのです。つまり、むづかしい言い方をすれば、人生も芸術も、つねに無と対決しているのです。だからこそおそろしい。



 (絵を描くなどして/引用者補足)自分の自由な感情をはっきりと外にあらわすことによって、あなたの精神は、またいちだんと高められます。つまり芸術を持つことは、自由を身につけることであって、その自由によって、自分自身をせまい枠の中から広く高く推し進めてゆくことなのです。



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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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