大森望・豊崎由美『文学賞メッタ斬り! ファイナル』


文学賞メッタ斬り! ファイナル文学賞メッタ斬り! ファイナル
(2012/08/01)
大森 望、豊崎 由美 他

商品詳細を見る


 一昨日から昨日にかけ、取材で仙台と気仙沼へ――。
 つづくときにはつづくもので、仙台に行くのは先月から3度目だ。

 今回は、東北大学の佐藤弘夫教授を取材(2年ぶり2度目)したのち、気仙沼で「希望ののむヨーグルト」を販売しておられる千葉清英さんを取材。


希望の のむヨーグルト720ml希望ののむヨーグルト720ml

気仙沼鹿折復幸マルシェ

商品詳細を見る


 千葉さんは、東日本大震災の津波で家族7人を亡くされた。ただ一人の家族となった長男で野球好きの瑛太くん(11歳)を元気づけるため、家から一時間半かけて隣県・岩手県のバッティングセンターに連れていくようになった。
「気仙沼にもバッティングセンターがあったらいいのに」
 瑛太くんのそんな願いを叶えるため、建設資金を貯めるために売りだしたのが、「希望ののむヨーグルト」だ。だから、ラベルには野球のボールがあしらわれている。



 「我が子のため」から始まったバッティングセンター建設の夢は、やがて「気仙沼の子どもたちを元気にしたい」という思いへと広がっていった。 

 家族7人を一度に失うという絶望は、どれほどの深さなのか。私には想像すらできない。その絶望の淵から蘇生し、自ら復興の一端を担おうとする千葉さんの人間としての強さに圧倒された。


 行き帰りの電車で、大森望・豊崎由美『文学賞メッタ斬り! ファイナル』(パルコ出版/1680円)を読了。

 『文学賞メッタ斬り!』シリーズの4年ぶり5冊目の単行本化にして、いちおうの最終巻。私は1冊目と2冊目しか読んでいないが、最後だということで手を伸ばしてみた。

■関連エントリ
『文学賞メッタ斬り!』レビュー
『文学賞メッタ斬り! リターンズ』レビュー

 文字は二段組み・三段組になり、すごい情報量がつめ込まれている。なにしろ、4年分の「メッタ斬り」が一冊に凝縮されているのだ。
 シリーズ1冊目には日本の主要文学賞のガイドブックとしての側面があったが、この巻では芥川賞・直木賞の2賞にほぼ的が絞られている。

 全編にマンネリ感が漂っていることは否めないが、値段分は十分楽しめる内容になっている。

 途中、東浩紀と佐々木敦をゲストに迎えての座談会形式になっている「文学賞対策委員会」なる章があり、ここが突出して面白い。とくに、東による文学賞再生のための提言は、極論のようでいて、文学賞をめぐる現状を見事に射抜いている印象だ。

 いわく、「純文学はテクスト+人が価値を生み出す」ものだから、「応募作品だけを読んで選考するというシステムは純文学の新人賞に合わないかもしれない」(だから、作品+オーディションで作者のキャラを見極めて選べ、という話に展開する)。
 いわく、“芥川賞を10年間停止せよ”。そうすれば純文学の末期状態があらわになって「どうしようもなくなるからみんな真剣に考えるんじゃないかな」。

 賞の選考過程や選考委員のキャラそのものまで楽しむという、文学賞のもう一つの楽しみ方を確立させた「メッタ斬り」シリーズの功績は大きいと思う(本はこれで打ち止めだが、ラジオ日本「ラジカントロプス2.0」での「メッタ斬り」は継続するそうだ)。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
30位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
22位
アクセスランキングを見る>>