エイドリアン・ゴールズワーシー『カエサル』


カエサル(上)カエサル(上)
(2012/08/24)
エイドリアン ゴールズワーシー

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 エイドリアン・ゴールズワーシー著、宮坂渉訳『カエサル』(白水社/上下巻各4620円)読了。書評用読書。

 英国の軍事史家によるユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の伝記である。
 上下巻併せて700ページを優に超える大著であり、読み終えるのに丸一日かかった。聞き慣れない人名や用語が大量に出てくるので、なかなか本の中に没入できなかったのだ。

 塩野七生も『ローマ人の物語』全15巻のうち2巻を割いて魅力的なカエサル伝をものしているが、塩野のそれが基本的に歴史小説であるのに対し、本書は帯にあるとおり「歴史書としてのカエサル伝」である。ゆえに、血湧き肉躍るエンタテインメント性はない。
 
 また、著者の筆致も歴史家らしく慎重で、安易な断定や想像による話の盛り上げは注意深く避けている。
 わからない点はわからないと書き、よく知られたエピソードでも、後世の創作の可能性が高いものについてはそう注記している。

 そんなわけで、読みやすくはないし、小説的な面白さには乏しいが、それでも丸一日費やして読むに値する重厚な作品であった。

 著者の文章には古典文学のような格調高さがあるし、古代ローマ世界の人々の暮らしが眼前に展開するような臨場感が素晴らしい。
 カエサルの後半生は戦争に次ぐ戦争なのだが、著者が軍事史家であるだけに、その戦争の描写のリアリティはとくにすごい。ハリウッド映画のようなわかりやすいアクション描写ではなく、兵士たちの食糧確保に苦労する様子などまで細かく書き込んだリアルな描写なのだ。

 また、カエサルその人については、人間離れしたスーパーマンとして描くのではなく、弱さや欠点もたくさんもっていた等身大の人間として描いている。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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