速水健朗『都市と消費とディズニーの夢』


都市と消費とディズニーの夢  ショッピングモーライゼーションの時代 (oneテーマ21)都市と消費とディズニーの夢 ショッピングモーライゼーションの時代 (oneテーマ21)
(2012/08/10)
速水 健朗

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 速水健朗(はやみず・けんろう)著『都市と消費とディズニーの夢――ショッピングモーライゼーションの時代』(角川oneテーマ21新書/760円)読了。

 仕事の資料として読んだものだが、面白く読めた。
 タイトルだけを見るとなんの本だかわからないが、要は“ショッピングモールの歴史と現状をフィルターとした都市論”である。

 日本でショッピングモールというと、イオンのモールがまず思い浮かぶ。と同時に、いくつかのネガティヴなイメージが一緒に浮かんでくる。地方都市の風景を画一化し、古くからの商店街を疲弊させた、地方の貧しさの象徴としてのショッピングモール――といったイメージが……。

 しかし、本書によればそうしたイメージは日本特有のごく一面的なものであり、本来のショッピングモールはアッパーミドルクラスにターゲットしたものであるという。また、「ショッピングモール=郊外の商業施設」と捉えるのも日本でだけ通用する“常識”で、「ある時期以後のショッピングモールの歴史は都市の歴史に他なりません」という。

 じつは「ショッピングモール後進国」であるという日本と、他の諸外国におけるショッピングモール観にはかなりの開きがあって、著者は一つひとつその誤解を正していく。

 著者はショッピングモールの歴史を遡り、その背景にある「思想と理念」を解説していく。「それは都市やテーマパークといった存在との関係性、結びつき抜きには語れないもの」であり、ウォルト・ディズニーもショッピングモールの思想に強く影響されていたという。ディズニーランドもまた、その影響から生まれたものなのだ。

 そして、著者の視点は、現代の都市にさまざまな形で現れたショッピングモール化=「ショッピングモーライゼーション」にも向けられていく。

  ショッピングモーライゼーションとは、「モータリゼーション」をふまえた著者の造語。
 それは第1に、「都市のスペースが最大限活用されることで、“些細なものでありながら、量としては膨大な都市の変化”」を指す。たとえば、1990年代以降、日本の都市部に急増したコインパーキングだ。それは土地のすき間を利用した「些細なもの」だが、都市の景観と機能を一変させた。

 第2に、「都市の公共機能が地価に最適化した形でショッピングモールとしてつくり替えられ、都市全体が競争原理によって収益性の高いショッピングモールのようになっていくという変化」も、ショッピングモーライゼーションだ。
 ターミナル駅や空港、テレビ局や電波塔などを中核としたショッピングモールの誕生が、その顕著な例である。

 本書は先日読んだ新雅史の『商店街はなぜ滅びるのか』の類書だが、切り口がまったく違うので読み比べると面白い。

 ショッピングモールという存在と、 その根底にある新自由主義的な競争原理、ひいては「消費」という行為そのものを、著者はいずれも肯定的にとらえている(礼賛してはいないが)。その点が、本書の大きな特徴といえる。
 読めばショッピングモールのイメージが一変する、すこぶる独創的な都市論。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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