笠井奈津子『甘い物は脳に悪い』


甘い物は脳に悪い (幻冬舎新書)甘い物は脳に悪い (幻冬舎新書)
(2011/09/29)
笠井 奈津子

商品詳細を見る


 笠井奈津子著『甘い物は脳に悪い――すぐに成果が出る食の新常識』(幻冬舎新書/777円)読了。

 最近、私は糖質の摂取をなるべく控えるように気をつけているので、参考になればと思って読んでみたもの。
 マスメディアでも広く活躍する栄養士・食事カウンセラー・フードアナリストの著者が、食生活の改善によって仕事の効率を高めたり、疲れにくくしたりするコツを紹介したもの。タイトルはアイキャッチであって、糖質の話ばかりが出てくるわけではない。

 かなり期待はずれだった。栄養学や脳科学の最新知識を駆使した科学的・客観的な内容を期待したのに、著者の主観が大幅に混入していて眉ツバな記述が多いのだ。
 たとえば――。

 要するに、好物は、その人にとって疲労回復の効率がいい食べ物なのです。
 ところが、いまの20代、30代の飽食で育った世代は、ちょっと違った好物の捉え方をしています。
 たとえば、それは「はまる食べ物」であったり、「癖になる食べ物」であったりします。元気が出る食べ物というよりは、嗜好優先の意味合いが濃く、体調がよくなるということにはあまり結びついていません。逆に、食べると決まって食べ疲れをしたり、身体がだるくなったりする料理でも、好物でよく食べるという人がたくさんいます。(14ページ)



 昔の人は好物を食べると疲労回復したのに、いまの若者は好物を食べると逆に身体がだるくなったり、「食べ疲れ」(って何?)をしたりするのだそうだ(笑)。
 何を根拠に言っていることなのか不明だし、そもそも栄養学とは微塵も関係のない記述である。

 ほかにも、「若者世代を中心に、食事をしていても何となくおいしそうな顔をしていない人が増えていると感じる」なんて一節があったりする。
 「おいしそうな顔」って(笑)。たまたま著者と食事を共にした若者の印象(それもごく主観的な)だけで、日本人全体の「食」を語るのもおかしな話である。

 要するに、著者は「昔の日本人の食生活はよかった。いまはダメだ」という先入観にとらわれてしまっていて、それに添って話を進めているだけのように思える。

 どの食べ物が脳にいい・悪いという話もたくさん出てくるのだが、著者の脳科学についての知識もかなりアヤシゲだ。というのも、次のような記述があるから。

 脳の神経細胞の数は、生まれたときに備わっていた数から、ひとつとして増えることはありません。年齢が進むにつれ、どんどん少なくなっていくだけです。(135ページ)



 成人後も一部の脳神経細胞が新しく生まれること(「新生ニューロン」という)は、1998年に立証され、いまではシロウトの私でさえ知っていること。そんなことも知らない著者に、脳科学を看板にした本を出す資格はないと思う。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
43位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
30位
アクセスランキングを見る>>