齋藤美和『編集者 齋藤十一』


編集者斎藤十一編集者斎藤十一
(2006/11)
斎藤 美和

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 齋藤美和・編『編集者 齋藤十一』(冬花社)読了。

 新潮社の「陰の天皇」と呼ばれ、『週刊新潮』『FOCUS』『新潮45』を立ち上げた「伝説の編集者」齋藤十一(じゅういち)。その七回忌を記念して、2006年に刊行された追悼文集である。
 夫人が編者となり、新潮社の幹部など、生前の齋藤をよく知る人々が寄稿している。

 そうした成り立ちゆえ当然ながら、齋藤の人を人とも思わぬ怪物的側面はあまり出てこない。むしろ、「意外にいい人じゃん」と思わせるような「ちょっといい話」が多い。
 なので、私には物足りない内容なのだが、それでも、齋藤を批判的にとらえる立場の者にも必読の本である。

 なにしろ、生前の齋藤はマスコミにほとんど登場しなかったため、彼に関するまとまった資料は本書以外にほとんどないのだ。わずかに、『週刊新潮』の編集部にいた亀井淳氏(故人)の『反人権雑誌の読み方――体験的「週刊新潮」批判』が、齋藤について一章を割いている程度。
 本書には、齋藤の数少ないインタビューも再録されている(雑誌『ビジネス・インテリジェンス』によるものと、死の少し前に行われたテレビ番組「ブロードキャスター」によるもの)。その意味でも資料的価値が高い本である。

 齋藤に発見され、鍛えられ、育て上げられた作家は枚挙にいとまがない。吉村昭、柴田錬三郎、山崎豊子、瀬戸内寂聴、山口瞳などなど……。また、小林秀雄も齋藤を深く信頼していたという。
 文芸編集者としては、たしかにまれに見る才能、慧眼の持ち主ではあったのだろう。

 しかし反面、齋藤によって「潰された」作家も数多い。そして、齋藤が創った『週刊新潮』などは、出版社系週刊誌の世界をスキャンダリズムと俗物主義の不毛な荒野にしてしまった。
 本書の証言からもうかがい知れるのだが、そもそも齋藤にはジャーナリズムに携わっているという自覚そのものがなかった。文芸の延長線上に週刊誌を創ったのである。

 よくも悪くも「怪物的」な存在であった齋藤十一の、素顔がかいま見える本。

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素晴らしいですね
  • 2012-12-12│03:01 |
  • IT探偵 god URL│
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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