水木しげる『水木しげるの古代出雲』


水木しげるの古代出雲 (怪BOOKS)水木しげるの古代出雲 (怪BOOKS)
(2012/03/24)
水木 しげる

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 今日は横浜で取材。ゴーストの仕事なので、中身はナイショ。

 帰りの電車で、水木しげる著『水木しげるの古代出雲』(角川書店/1575円)を読んだ。

 島根との境に位置する鳥取県境港市の出身で、出雲とも縁深い水木は、30年ほど前から、夢に出てくる古代出雲の青年にこう言われつづけてきたという。

「水木よ、我々出雲族の物語りを描くのだ。我々滅ぼされた出雲族のことを皆に知らしめるのだ」



 本作は、その声にようやく応えたものなのである。

 国産み・神産み、アマテラスとスサノオの話、ヤマタノオロチや因幡の白兎の話など、日本神話・出雲神話の代表的エピソードが、紀記の記述に忠実にひととおり描かれる。
 飄々としたユーモアをたたえた味わい深い絵で表現される神話は、それ自体十分魅力的だ。
 たとえば、アメノウズメが天岩戸の前で踊り、胸をボイーンとはだけると、まわりの男神たちが「うわーッ!! スゲーッ!!」と大喜びする場面など、もう爆笑ものである(言葉で説明しても面白さが伝わらないだろうが)。

 しかし本作の魅力は、日本神話のよくできたマンガ化というだけにとどまらない。随所に水木本人が登場し、神話の背後にある古代日本史について独自の解釈をくり広げるところが、もう一つの大きな魅力になっているのだ。

 たとえば、オオクニヌシによる「国譲り」の神話について、作中の水木は言う。

「実際にはこんなキレイ事じゃなかったんだろう。容易には渡せないと思うな。自分が苦労して造った国をはいどうぞ……とそんな簡単に引き渡すわけにはいかないだろう」(句読点は引用者補足)



 そして水木は、大和に滅ぼされた出雲王朝(※)の悲しい終焉とオオクニヌシの深い無念を、力を込めて描く。
 それを見届けた夢の中の出雲青年は、「水木よ、私の思いをわかってくれてありがとう。私はもう二度と現れることはないだろう」と告げて消えていくのだ。

※もっとも、出雲神話の史実性については、邪馬台国同様論争が絶えないようだが。

 水木の古代史への深い造詣が土台となった、かつてない面白さの「マンガによる日本神話」である。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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