矢野顕子『荒野の呼び声 -東京録音-』


荒野の呼び声 -東京録音-荒野の呼び声 -東京録音-
(2012/08/08)
矢野顕子

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 矢野顕子の『荒野の呼び声 -東京録音-』(ヤマハミュージック・コミュニケーションズ/3150円)を購入。さっそくヘビロ中。8月に出た最新ライヴ・アルバムである。

 矢野顕子は初期から節目節目にライヴ盤を出してきたが、それぞれが傑作でハズレがない。
 私がとくに好きなのは1979年の傑作『東京は夜の7時』で、いまでもときどき引っぱり出して聴く。バックはYMOの3人をはじめとした腕利きたちで、山下達郎と吉田美奈子がバックコーラスを務めている(!)という、いまでは考えられない豪華メンツのライヴ盤であった。
 また、昨年の上原ひろみとの共演ライヴ『Get Together』もよかった。

 本作は、「矢野顕子の様々なライヴ・スタイルを一枚にまとめたベスト・ライヴ・アルバム。2009年~2010年にBlue Note、NHKホール、鎌倉芸術館にて行ったライヴから選りすぐりの曲を収録」というものなので、タイプとしては『TWILIGHT~the“LIVE”best of Akiko Yano~』に近いか。でも、個人的には『TWILIGHT』よりこっちのほうが気に入った。

 全体に、「やさしくあったかいアッコちゃん」より、「カッコよくてパワフルなオトコ前の矢野顕子」が前面に出ている感じ。ピアノ弾き語りはラストの「椰子の実」だけで、ほかの曲には激しいドラムスやギターがフィーチャーされたものも多いし。
 たとえば、レッド・ツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」のカヴァーを演っているのだが(アルバム『akiko』にスタジオ・ヴァージョン所収)、その後半のギターとドラムスの盛り上がりなど、「ほとんどハードロック」である。

 アッコちゃんのピアノの魅力はいまさら言うまでもないわけだが、本作は彼女のヴォーカリストとしての魅力も堪能できるものとなっている。
 とくに、キンクスの「ユー・リアリー・ガット・ミー」やラスカルズの「People Got To Be Free」のカヴァーでのヴォーカルはすこぶるソウルフルで、矢野顕子の一般的イメージを大きく覆すだろう。

 過去のアルバムですでにスタジオ・ヴァージョンが披露されている曲も、アレンジが全面刷新されているものが多く、別の曲として愉しむことができる。

 たとえば、沖縄民謡「てぃんさぐぬ花」は、元はアルバム『ELEPHANT HOTEL』(1994)で取り上げていたものだが、本作での演奏は途中で渓流の水が迸るような透明感あふれるジャズになっていく。そこが鳥肌モノ。
 カントリー風のアレンジがなされた「気球にのって」は個人的にはイマイチだったが、ほかはだいたいスタジオ・ヴァージョンよりカッコいい。

 唯一スタジオ録音の新曲として収録された「こんなところにいてはいけない」は、コンビで多くの名曲を産み出してきた糸井重里との共同作詞によるもの。
 歌詞から察するに、東日本大震災からの復興の祈りが根底に込められた曲。シンプルでポップ。そして静かな力強さに満ちている。

 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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