渡邉正裕『10年後に食える仕事、食えない仕事』


10年後に食える仕事、食えない仕事10年後に食える仕事、食えない仕事
(2012/02/03)
渡邉 正裕

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 渡邉正裕著『10年後に食える仕事、食えない仕事』(東洋経済新報社/1575円)読了。

 うちの短大1年生のムスメが「どんな就職先を目指したらいいのかわからない」と言うので、親として一緒に考えようということで、参考資料として読んだ本。

 「はじめに」には、次のようにある。

 グローバル化がいくら進もうが、日本人の仕事として日本に残る仕事は、必ず残り続ける。逆に、グローバル化で減る仕事、賃金相場が限界まで下がり続ける仕事、丸ごとなくなる仕事がたくさん出てくるのも事実だ。だから、自分がどの領域で稼ぐのかを考え、仕事を選び、能力を高めていかねばならない。本書はその航路図となるものを目指して執筆した。



 10年前には世界の頂点に立っていた日本の半導体業界が惨憺たる状況になっていたり、家電大手が軒並み危機に陥っていたりと、栄枯盛衰目まぐるしい日本のビジネス界――。
 では、10年後にはどの仕事が凋落し、どの仕事が安泰なのか? 『企業ミシュラン』シリーズの執筆者で、独立系ニュースサイト「MyNewsJapan」のオーナー兼編集長でもある著者が、豊富な企業取材経験をふまえてその見取り図を提示する本だ。

 著者はあらゆる職業を、以下の4つの象限に大別する。

①重力の世界――グローバル化の波に直撃され、最低水準給与に収斂されていく仕事。名前は「重力に引っぱられるように給与が下がっていく」という意味
②無国籍ジャングル――「日本人であること」が意味をもたず、世界の有能な人材との戦いを強いられる弱肉強食の仕事
③ジャパンプレミアム――日本人にしかできない、低賃金の途上国にアウトソーシングできない仕事
④グローカル――日本人の強みを生かしつつ、グローバル化にも対応できる仕事。「グローカル」とは「グローバル」と「ローカル」の合成語

 そのうえで、どの仕事が10年後のどの領域にあたるのかが、具体的なエピソードやデータをふまえてわかりやすく解説されていく。

 「10年後に食えない仕事」にあたるのは①の「重力の世界」で、低付加価値なブルーカラー職種の多くがここに入る。この領域の仕事は、低賃金の途上国にどんどんアウトソーシングされるか、外国人労働者に置き換わっていく。
 日本人の7割以上がこの領域の仕事に就いているとのことで、その人たちは10年後には職を失うか、ぎりぎりの低賃金に甘んじることになるという。

 よくまとまっている本だし、仕事の将来性の大まかな見取り図としては役に立つ。
 ただ、本書で「10年後に食える・食えない」の判断軸になっているのは、グローバル化という軸でしかない。いくつか判断軸があるうちの一つであり、本書だけを参考に若者が仕事を選ぶのは危険だ。

 たとえば、私がやっているフリーライターという仕事は、本書の分類でいけば「ジャパンプレミアム」にあたるだろう。日本語で記事や本を書く仕事を、原稿料の安いミャンマー人のライターにアウトソーシングする、というわけにはいかないからだ。
 その意味でグローバル化の荒波とは無縁だが、かといって、「フリーライターは10年後も安泰」とはとても言えない。むしろ、業界そのものの消長という判断軸から見れば、「10年後に食えない仕事」の筆頭にあげられそうだ(笑)。

 また、著者は「不動産業界は、総じて、グローカル職の総合体といってよい」と書くのだが、それは“不動産業界の仕事は外国人に置き換えにくい”というだけのことで、「10年後も安泰」という話ではあるまい。
 むしろ、私のシロウト考えでは、不動産業界の10年後はかなりヤバイだろう。日本の空き家率がどんどん上昇しているのに、(目先の利益を優先してか)いまなおマンションが続々と建っているし、しかも少子高齢化で不動産需要は右肩下がりなのだから……。

 そのように、著者の言う「10年後に食える・食えない」の判断には、首をかしげる点も少なくない。
 とはいえ、「重力の世界」に属する仕事群に未来がないことは同感だし、日本人の仕事に対するグローバル化の影響を概観した本としては上出来だ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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