吉田豪『サブカル・スーパースター鬱伝』


サブカル・スーパースター鬱伝サブカル・スーパースター鬱伝
(2012/07/21)
吉田 豪

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 吉田豪著『サブカル・スーパースター鬱伝』(徳間書店/1680円)読了。

 プロインタビュアーの著者が、「サブカル男は40歳を超えると鬱になる」というテーマに沿って、11人の「サブカル者」に話を聞いたインタビュー集。『クイック・ジャパン』誌上で「不惑のサブカルロード」と題して連載されたものの単行本化だ。
 最後の香山リカへのインタビューだけが語り下ろし。精神科医にして筋金入りのサブカル者である彼女に、ほかの10人へのインタビューを総括してもらう内容である。

 インタビューイとして自らの鬱体験を語る10人は、リリー・フランキー、大槻ケンヂ、みうらじゅん、松尾スズキ、川勝正幸(故人)、杉作J太郎、菊地成孔、ECD、枡野浩一、唐沢俊一というラインナップ。
 
 テーマがテーマだけに、吉田のほかのインタビュー集――『人間コク宝』シリーズなど――のような突き抜けた面白さはない(いつもの「ダハハハハ!」もやや少なめ)。むしろ身につまされる部分が多い。私自身が40代の物書きで、広義の同業者も多く登場するから、なおさらだ。

 幸い私は鬱体験がなく、眠れなくて困ったこともない(いつなんどき、どこででも熟睡できるw)。しかし、今後ならないとは当然かぎらない。その意味で、鬱になった場合の抜け出し方のコツを知っておくためにも有益な本であった。

 すべてのインタビューに共通する印象は、「みんなサービス精神旺盛だなあ」というもの。つらい鬱体験を語るというのに、インタビューが面白くなるようにがんばってサービスしている感じなのである。こんなに「気ィ遣いィ」だから鬱になってしまうのではないか。

 まあ、サブカルにかぎらず、40代の男性自由業者が鬱になりやすいというのはよくわかる。
 ただでさえ「中年クライシス」に陥りやすい時期なのに、40代に入ると原稿依頼が急に減ったりするのもありがちだし、体力・気力も落ち、いろんな病気にもかかりやすくなってくるし……。
 くわえて、サブカル・ジャンルで生きている人には、やはり繊細で傷つきやすいタイプが多いのだろう。

 あとがき代わりの著者インタビューには、次のような一節がある。

――こうやってまとめて読むと、「サブカル」っていうジャンルの斜陽についても感じざるを得ないというか……。
吉田 もはや「サブカル」を名乗ることになんのメリットもないですからね。



 出版界全体が斜陽であるうえ、サブカル界隈はとくに斜陽度合いがハンパない(たとえば、本書で枡野浩一は「いまバイトもしようと思ってますね」とマジメに語っている)から、未来が見えず、鬱傾向にいっそう拍車がかかるわけだ。
 もっとも、リリー・フランキーのように超売れっ子になってから鬱になったケースもあるから、一概に斜陽が原因とも言いきれないのだが……。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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