深町秋生『アウトクラッシュ』


アウトクラッシュ 組織犯罪対策課 八神瑛子Ⅱ (幻冬舎文庫)アウトクラッシュ 組織犯罪対策課 八神瑛子Ⅱ (幻冬舎文庫)
(2012/03/30)
深町 秋生

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 深町秋生著『アウトクラッシュ――組織犯罪対策課 八神瑛子Ⅱ』(幻冬舎文庫/630円)読了。
  
 目的のためなら悪党と手を組むことも辞さない、型破りな女刑事が活躍するハード・アクション・ノベルの、シリーズ第2弾。昨年の第1弾『アウトバーン』も面白かったが、これも期待を裏切らない出来だ。

■関連エントリ→ 深町秋生『アウトバーン』レビュー

 前作の事件からわずか3ヶ月後という設定になっている。このへんは「いかにも」という感じ。
 というのも、このシリーズの特長はヒロインの「生き急いでいる」印象のキャラ設定にあるから。

 そこから考えて、『新宿鮫』のような長期シリーズになるとはとても思えない。たぶん、長くても5作くらい、時間軸としては2年くらいの間にすべての決着がつき(=瑛子の亡き夫の死の真相が突きとめられ、死に追いやった者たちへの復讐が完了する)、シリーズが完結するだろう。

 今回の敵は、メキシコの麻薬組織「ソノラ・カルテル」が送り込んだ最強の殺し屋「グラニソ(雹)」。
 瑛子とグラニソが対決するクライマックスに向けて、たたみかけるスピーディーな展開で物語が進んでいく。575枚の長編を一気に読ませるリーダビリティはさすがだ。

 「ソノラ・カルテル」がコロンビアのメデジン・カルテルを下敷きにしているように、登場人物や組織のモデルも見え見え。山口組をモデルにした「華岡組」、関東連合をモデルにした「東京同盟」、海老蔵暴行事件の犯人・伊藤リオンをモデルにした比嘉アントニオ……という具合だ。安直なキャラ設定は、まるで平松伸二のアクション劇画のようで、いかにもB級ではある。

 しかし、B級でいいのだ。「B級映画」という言葉がある種の映画への最高の讃辞であるように、ホメ言葉としてB級アクション小説と呼びたい。
 おそらくは作者も高級料理を提供するつもりはなく、安くてもうまくて腹いっぱいになるB級グルメのような小説を書こうと思っていることだろう。そして、その意図は十二分に達成されている。つかの間の娯楽としてハイクオリティーな小説。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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