大槻ケンヂ『サブカルで食う』


サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法
(2012/04/28)
大槻 ケンヂ

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 大槻ケンヂ著『サブカルで食う――就職せずに好きなことだけやって生きていく方法』(白夜書房/1000円)読了。

 オーケンこと筋肉少女帯の大槻ケンヂが、自らの来し方を振り返りながら、若者たちに「サブカルで食う」ための心構えを説いた語り下ろしエッセイ。北村ヂンというライターが構成(=インタビューして話の内容を文章にまとめる)を担当している(※)。

※構成者がいることは本に明記されているのに、アマゾンのカスタマーレビューを見たら「いつもの大槻さんの本と文体が違う!」と文句をつけている人がいた。困ったもんである。

 「サブカルで食う」というのは、オーケンやリリー・フランキーみたいに、あるいは竹熊健太郎やライムスター宇多丸みたいに、「サブカル・ジャンルでいろいろクリエイティブな表現活動をして生計を立てる」ことを指すのであろう。
 しかしそれは、たんに「フリーライターになる」なんてことよりもはるかに狭き門であって、本書を読んだくらいでどうにかなるものだとはとても思えない。

 まあ、そんなことは当のオーケンだって百も承知だろう。本書はハウツー本というより、ハウツー本の形式を借りたオーケンの語り下ろし自伝である。そして、自伝として読むかぎりメチャメチャ面白い本だ。

 とくに、1980年代前半あたりからのサブカル・シーンを肌で知る身には、本書で矢継ぎ早に披露されるサブカル界隈裏話が、もう面白くて仕方ない。本書にはライターの北村によって大量の脚注がつけられているのだが、私にはほぼすべての脚注が不要だった。なくても理解できたのである。
 オーケンとほぼ同世代で、同時代を「サブカル好き」として生きてきてライターをしている私には、本書のオーケンの言葉の一つひとつが共感できる。あまりに共感しすぎて胸苦しさを覚えるほどだ。

 唸った一節、共感した一節、笑った一節を引用する。

 あの頃、何かを表現したいと思っている少年少女が出会う場所というのはライブハウスしかなかった。だからみんな仲間とつながるため、友達を作るためにとりあえずライブハウスに通っていたんです。今、SNSでやっていることを、僕らはリアルでやる必要があった。それはとてもいい経験値の上げ方だったと思います。パソコンがなくて僕らは得をした。



 多少モテてたとしたら、すぐにバンドなんてやめていたと思いますよ。モテないっていうのもチャンスになりますね。モテないって劣等感はダイナマイト500本分のパワーがあります。その後に必ず創作の源になりますから。大切にすべきです。男子も女子も。



 80年代後半のあの頃、ロックバンドでメシを食っていくなんてことは、「俺、ブータンに行って国王を継ごうと思うんだよ」って言い出すくらいの世迷い言でした。



 僕はインディーズブーム、バンドブームというものに乗って一時期、一挙に人気が出たのですが、「人気が出る」ということは「ある日突然、いわれのない愛と憎しみを一身に受けるようになること」です。
(中略)
 路上でいきなり女の子がパッとスカートをめくって「このパンツにサインをしてください!」なんてことを真顔で言われたこともよくありました。
 そういうわけのわからない愛情(?)と同時に、人気が出た人には憎しみというのも沢山向けられるんですね。これがキツイです。
 嫉妬心なのか何なのか分かりませんが、街を歩いているだけで若いバンドマン風の兄ちゃんから「くだらない歌で売れやがって!」と暴言を吐かれたり。



 「サブカルで食う」ためのハウツー書にはならないとしても、サブカルにかぎらず何か表現行為をしたいと思っている若者の背中を押し、勇気を与えてくれる本だ。
 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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