マーラ・ヴィステンドール『女性のいない世界』


女性のいない世界 性比不均衡がもたらす恐怖のシナリオ女性のいない世界 性比不均衡がもたらす恐怖のシナリオ
(2012/06/22)
マーラ・ヴィステンドール

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 マーラ・ヴィステンドール著、大田直子訳『女性のいない世界――性比不均衡がもたらす恐怖のシナリオ』(講談社/2310円)読了。書評用読書。

 なにやらSF小説のようなタイトルだが、そうではない。アジアを中心に広がる「性比(男女比)不均衡」の問題に光を当てたノンフィクションである。

 自然な出生性比というのは、だいたい女子100人に対して男子105人の割合になるのだそうだ。
 なぜ男子のほうが多めかというと、男子には我が身を危険にさらす本能的傾向があり、女子より死ぬ確率が高いため。男子が5%多めに生まれることで、成人男女の均衡がちょうどよくなるのだ。自然というのはうまくできているものである。

 ところが、1980年代あたりから、中国、インドなどのアジア各国を中心に、この均衡が大きく崩れ始めている。女児の出生数が大幅に減っているのだ。
 本書は、この性比不均衡がなぜ起きているのか、そして、今後の世界にどのような悪影響を及ぼすのかを、北京在住の米国人女性ジャーナリストが綿密な調査から探ったもの。

 勘のいい人なら、「ああ、男女産み分け技術が発達したから、男尊女卑傾向が強いアジアでは女児が避けられてしまうんでしょ?」とか、「中国の一人っ子政策の影響でしょ?」などと、答えの予想がつくであろう。
 たしかに、それらも要因の一つではある。が、事態はもっと複雑に入り組んでいるのだ。たとえば、欧米各国の人口抑制政策がアジア諸国にも影を落としていたりとか……。

 “女性の少ない世界ではどんなことが起こるのか?”を多角的に探った最後の第3部には、それこそSFのようなスリルもある。
 著者は、テストステロン濃度の変化などというファクターまで持ちだして、結婚できない男が世界に増えると、犯罪や戦争が増えると予測している(!)。そのくだりを読んで私は思わず笑ってしまったが、考えみれば笑いごとではないのだ。

 読後に世界が少し変わって見えるような、知的興奮に満ちたノンフィクション。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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