中村麗『これだけは知っておきたい「名画の常識」』


これだけは知っておきたい「名画の常識」 (小学館101ビジュアル新書)これだけは知っておきたい「名画の常識」 (小学館101ビジュアル新書)
(2012/04/02)
中村 麗

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 中村麗(うらら)著『これだけは知っておきたい「名画の常識」』(小学館101ビジュアル新書/1155円)読了。

 西洋絵画の出発点ともいうべき、15~16世紀の名画の数々を題材に、絵画の常識・約束ごとを紹介した“西洋絵画の見方入門”である。
 当然、多くの絵画がキリスト教の教義(やギリシア神話)にかかわってくるので、“絵画をフィルターにしたキリスト教入門”としても読める。

 この手の「絵画の見方入門」はほかにもたくさんあるが、私には本書がいちばんわかりやすくて面白かった。オールカラーなので、著者が解説する“絵画の仕組み”が目で見てわかるし、見ているだけで愉しい。

 書名のとおり、絵画にくわしい人にとっては本書の内容は「常識」なのだろうが、私にとっては新鮮な知識満載の本であった。

 とくに「へーっ」と思った箇所を引用する。

 西洋絵画に裸体画が多いのは、ルネサンスに生まれた人間の身体に対する「肯定的な表現」によって象徴される、現実世界に対する考え方が、今日に至るまで生き続けているからであり、人間の肉体こそが西洋絵画における唯一の「美の基準」として今日まで認められているからなのだ。
 その卑近な例として、美術学校における裸体デッサンを重視した教育方針を挙げることができる。21世紀というコンピューター・グラフィックス全盛の時代に、美術学校ではなぜ相変わらず裸体デッサンが必須となっているのだろうか。(中略)その真の理由は、人間の肉体(裸体)こそが「美」の唯一の基準であるとするルネサンスの考え方が現在まで継承されているからなのだ。



 一般向けの美術館などなかった当時、教会に掲げられる宗教絵画は民衆と最先端の絵画をつなぐ唯一の接点でもあったわけだが、初めて遠近法を使った絵(マザッチョの『聖三位一体』1427~28)も聖堂壁画であった。

 これまで誰も見たことのない奥行き、初めて見る、まるで壁の向こうに現実に空間が広がっていて、その中に入って行けるかのように見える絵画。これ以降の西洋絵画の、いわば根幹となり大原則ともなった遠近法は、一般市民の目の前で誕生したのだ。それはまさに、時代の大きな変化に立ち会うような、奇跡にも似た衝撃的な出来事だっただろう。



 初めて遠近法に触れて驚嘆する民衆の姿が、目に浮かぶようだ。ちょっと感動的。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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